7話目 ページ7
「これって本物「本物だよ!好きなだけ触って確認しろ。」」
源は警察手帳を膝の上に置いてきて、剛の手帳もポンと…。
生まれてこの方、見た事もなければ触った事もないから確認って言われてもどうすれば良いのか。
「で、A。アクトレスなんだけど、本当に働いてない?」
「うん、働いて…ない。面接に行こうとしてただけだから。」
ほっとした表情で剛は頷き、源の顔を見た。
「俺ら警察には守秘義務ってのがあんだけどな…今回ばかりは言わねぇと…だな。」
「Aは誰にも言わないよね?実は今度…」
二人が言うには私が行こうとしていたアクトレスに近々捜査が入るという。従業員名簿も署に持ち帰って調べ、後日呼び出して事情聴取の可能性があったから焦ったんだと教えてくれた。
「そう…だったんだ。でも二人って、ちゃんと朝に行って、夜には帰ってくるよね?てっきりサラリーマンか何かだと思ってた。」
「俺らも月給制だからサラリーマンだけど?」
「同居する奴が野郎じゃなかったから危なくねぇ部署に変えてもらったんだよ。前は剛と一緒に散々ゴタゴタしてたからな。」
「そうそう、同居人を危険な目に合わせられないってね〜。」
いつもみたいにヘラヘラ笑う剛を見て言葉に詰まる。
知らなかったとはいえ仕事の邪魔をして、泣いて、迷惑をかけてしまった。
「ごめんなさい、その…捜査を中断させてしまって。」
「それはまぁ…俺らもカァっとなっちまったからな。」
「え、俺も?俺は冷静だったじゃん〜。」
「は?あれの何処が…いや、違う。」
源は正座を崩してあぐらをかき、私を真っ直ぐ見つめてくる。
「今度はAが話す番だろ?邪魔だとか何とか、何考えてた?」
「それ…は…。」
二人の警察手帳をぎゅっと握り締め、ぽつりぽつりと経緯と自分の気持ちを話していった。
「つまり…大人の絵本を見つけたのが事の発端って訳!?」
「うん。そう…。」
「俺らがそんなの見るのがやだ?」
「じゃなくて、私が居るとお付き合いするのとか邪魔になってるのかとか、そういう欲求を無理に押さえ込んでるのかとか…ぐちゃぐちゃになって。」
ふんふんと聞く剛とは対照的に時々頭を抱え、ため息をつく源。
「あれは…俺の本だ。」
「源ちゃん、そんなの持ってたっけ?」
「Aと一緒に住む時に処分した。でもやっぱ捨てられないのがあって。」
「え、見せてよ、ズルい!」
見せろと騒ぐ剛の足を蹴り、「悪かったな。」と頭を下げてきた。
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作者名:fugurifurifuri0 | 作成日時:2020年9月9日 15時