5話目 ページ5
「元気出た?」
熱いコーヒーを渡すと剛が手を握ってくる。
「うん、ありがとう。」
「Aの笑ってる顔が好きなんだよ、俺らは。」
源が私の後頭部をぐしゃぐしゃとして微笑んだ。
「で、何があったの?」
「剛、もう聞いてやんなよ。」
…朝から…話すような話題じゃないよね?
「今度話すよ、ちゃんとね。」
「「あんのかよ!?」」
二人は驚いた顔を私に向けたが「わかった。」と何度も頷いていた。
「すみません、今日は急用で。はい、明日は出勤します。」
二人が出掛けてから、会社にずる休みの電話を入れる。
どうしても面接に行きたい所があって、なるべく早く話を聞いてみたかったから。
今の仕事は居心地は良いし、楽しいし。欠点は給料が安いところ。
過保護な剛と源がダブルワークを許してくれるかわからないけど、動いてみなきゃ埒があかない。
「さて…と。」
帰りが遅くなると困るからと夕食を作り、冷蔵庫に入れておいた。
「ごめんね、帰りが少し遅くなるかも。」
「迎えに行っ「大丈夫、大丈夫だから!また電話するね!」」
「おま…」
まだ源が話してるのに電話をぶち切った私。
帰ったら怒られるだろうなと思いながら面接場所に向かう。
沢山似たようなビルが並んでいて…地図アプリと睨めっこして何とか辿り着く事が出来た。
「アクトレス…ここで間違い…無いよね?」
きらびやかな看板を見て、嫌でも緊張が高まってくる。
そう、私はキャバクラの面接に行こうと考えていた。
短時間OK、お酒飲まなくてもOK、衣装は貸し出しOK、帰りの送りと日払いもOK。で、時給が高い。
「…あまり早く行くと迷惑かな?」
約束の時間より30分近く早く着いてしまい、どうしようかとその場に佇んでいた。
「電話してみよ「…A?」」
鞄を漁っていると聞き覚えのある声が聞こえてきて…心臓が忙しない音を立て始める。
「え、こんな所で何してんだよ?」
恐る恐る声のした方を見ると…源と剛が難しい顔をして立っていて…。
ここは有数の歓楽街で、まさか二人に会うなんて思ってもみなかった。こんな所に来る人じゃないと勝手に決め付けてしまっていた。
「何してるんだって聞いてるんだ。」
「っ、痛いよ、源。」
…こんな怖い顔してるの…見た事ない…。
腕を掴む源を見れなくて顔を背けると剛の鋭い視線とぶつかる。
「まさか働いてんじゃ「はっ、離して。二人だって…何で居るの!?」」
途端に口ごもる二人を睨み付け、私は駆け出した。
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作者名:fugurifurifuri0 | 作成日時:2020年9月9日 15時