愚者の王冠 (ページ23)

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選出ページ23

冷たいスタジオの真ん中。鏡張りの壁を背に1人の少年が周りに広げられた紙を確認しては放り投げる。
初めは手元にまとめられていた紙たちも雑に手放すものだから無秩序に散らばってしまった。

「ケイくん！綺麗にして！」

「んー」

画角の外から注意を受けたケイが散乱した紙をもぞもぞと掻き集める。

「カナは？」

「仕事ー」

「珍しいね、まだ終わんないんだ」

「おー」

仮面を付けながら姿を見せたアルトも一緒になって紙を集める。集まった紙は遠目にはよく見えないが如何やら楽譜のようだ。

「コレは？」

「ダンスのじゃなくていいの？」

「んーでも、あんまり激しくしたら辛いのはアルトだろ」

「言い方」

アルトが振り下ろした拳はペチペチと音を立てるのみであまり攻撃力は高くないのが窺えた。
ペチペチ、ペチペチ、ペチペチ…
軽い衝撃に揺れる体を無視してケイはまた次の紙へ視線を落とす。
そのうちアルトも飽きてきたのか、同じように紙を確認していく。時たまコレは？アレは？と束から抜き取られた紙が2人の前に並べられていく。

「…なんだって急に出てもいいなんて言ったんだ？」

「ケイくんはヤだった？」

「別に」

一通り目を通された束を端に避け、選抜された紙を1枚手に取る。

「兄さま達は怒ってなかったって」

「言ってたな」

「でも、知らない人たちが怒ってる。意味がわからない」

「そうな」

ポツポツと話すアルトに相槌を入れながらスマホを弄ると何処からかBGMが流れ出す。
歌はなく、メロディーだけだが分かる人が聞けばクラウンが以前発表した曲だと分かることだろう。

「カナがね、言いたいことは言わないとわからないって言われたんだって」

「…あー、え、めんどくさ」

「ね。
それで、お話しするならテレビに出るのが早いかなって思ったの」