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何度読み直しても紙に書かれた文字が変わることはない。
「やっぱり聴こえないのか…」
肺の奥底にこびり付いた空気すらも押し出すかのように深く息を吐き出した。
あの嵐の中で振り返った薄紫の双玉はまぐれだったのか。
まだ、オトと普通に話すことはできないのか。
方や口頭、方や筆談という歪な対話が普通という範疇にあるのかは疑問ではあるが、ホンゴウの声を扉越しに聞いていた為か落胆があまりに大きかった。
気を取り直してオトと同じようにペンを手に取りメモ紙に向かい合う。
「…話すのは簡単なのになあ」
何も考えずとも口からはつらつらと流れ出る言葉は、吐き口をペン先に変えた途端根詰まりを起こして一向に出てこない。
さっきまで話していたことをそのまま書き出せばいいだろうと言ってくる頭とは裏腹に動きの鈍い手はほんの数文字の文章すらも書き出すのが難しい。
チラっと視線を向けるとブルーブラックのシミばかりを作り出す手元にオトの真剣な眼差しが向けられていた。
こうなればいい加減腹を括るしかなかろう。
「よしっ！」
字が汚いことは充分自覚している。
オトと筆談するようになり珍しく練習もしたが未だベックマンらから合格の判を貰えた試しがない。
伝えたいことは沢山あるが全て書き出しては読み難かろう。
「これでどうだ！」
要点のみを書き出し手渡すとオトは小さなメモ紙を宝物かのように大事そうに受け取った。
大して埋まっていない紙面を何度も読み返していた割に返答は［わかった］の一言だけ。あまりの素っ気なさがいっそオトらしかった。
そういえば、忘れてはいけないことがもう一つあった。
［何か欲しいものはないか？］
いつものように何も無いと返ってくると思っていたのだが、オトは少し迷うような仕草をし文字を書きつけた紙を差し出してきた。
［だきしめてほしい］
拍子抜けする程愛らしい要望は簡単に叶えられた。
「ちょっと違うんだが、まあいいか」
両腕の中に閉じ込めた体は思っていたよりも小さく冷たかった。
恐る恐る伸ばされた手がぎこちなく背中を掴む。
ホンゴウの言葉が甦る。
「俺はお前の何を見ていたんだろうな」
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トト(プロフ) - 名無しの権兵衛さん» コメントありがとうございます。ノリと勢いだけで書いているのでペースがまちまちですがのんびりお付き合い頂けると嬉しいです。 (2023年1月24日 6時) (
レス) id: 2fbe74351e (このIDを非表示/違反報告)
名無しの権兵衛 - めっちゃ面白いです！いつも更新楽しみにしています。頑張ってください！ (2023年1月24日 0時) (レス) @page24 id: 415bc119d2 (このIDを非表示/違反報告)
トト(プロフ) - 穹さん» コメントありがとうございます。にわか過ぎてキャラがいまいち定まっていない気がしていますが、楽しんでいただけていたら嬉しいです。 (2023年1月22日 17時) (レス) id: 2fbe74351e (このIDを非表示/違反報告)
穹(プロフ) - とても面白いです✨ライムジュースたちのオトくんへの対応が優しすぎて…🤦♀️応援してます✨ (2023年1月22日 15時) (レス) @page20 id: 17ca666086 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：トト | 作成日時：2022年12月30日 23時
