世界の裏側 - 1 ページ18
＿＿特殊部隊の出だとは知っていたが...こんなことになるとは思ってもみなかった。
「殺してない」
「それは知っているが...アリは無事なのか？」
「捻挫と打撲、あとは精神的なもの」
「お前は...」
「問題ない」
店の外で、のんきにタバコをふかしながら不機嫌そうな顔を浮かべたままの彼女と赤井は、視線を交えることなくそんな会話をしたのちに目の前を通り過ぎていった、アリの乗っている救急車に視線を送った。
「国防総省に連絡を。私と同じ部隊にいた人間に警戒するよう伝えて欲しい、必要なら警備もつけさせて」
「それは構わないが...お前にも警備はつけるぞ？」
「いらない、現に3人あの世に送りかけた」
「それは、わかっているが...」
わかっているが、こんなことになってしまっては警備をつける他ないだろう...と赤井は彼女の表情をうかがう。
しかし、彼女は表情を一つも変えることなく、2本目の煙草に火をつけるのだ。いつものように。
「まだ戦場だよ」
そして、煙にそんな一言を混ぜて空へ登らせる。
赤井にはその言葉の意味はよくわからなかったが、彼女の心がまだ戦場から抜け出せていないということはなんとなく、感じ取っていた。退役した軍人にはよくあることなのだ。普通の生活に、心が追いつかない。そんなことがよくあるのだ。
「ガラスは全て回収してしまっても...？」
「好きにしてもらって構わないよ、散らかさなければ」
科学捜査班の1人が店内に散らばったガラスに関する質問をAへ恐る恐るすれば、彼女は悠々と答える。
そりゃあ、不機嫌面・眼光の鋭い瞳を併せ持った人間に話しかけるには、それ相応の緊張が伴うだろう。
しかし、本人はそんなことなど気にすることなく...ふう、と彼女の口から吐き出される煙はふわふわと遠くへ消えていく様子を、2人は慌ただしい現場の中央で見守っていた。
「失礼します。白鮫さん、長官からの伝言です」
そんな時、2人の目の前にやってきたのは、いかにも軍人らしい格好をした1人の青年であった。
「ここで言っていいよ」
赤井の存在を気にしているような青年に、Aは気にしなくても良い、と瞳を伏せる。
「あの3人組は4年前の『アノ』反乱に関わりがあるようで...おそらく、白鮫さんの当時の部隊に所属していた人間への復讐を考えているようです。今すぐに、一度本部へ来ていただきます」
「仲間は無事なの？」
「いえ、それが...今年に入ってから4人が...消されています」
「...そう。何かわかれば、また連絡して」
最後まで話を聞いた彼女の瞳は、どこか空虚な世界を映していた。
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ｉ(プロフ) - 完結おめでとうございます！シノユズさんが創り出すユーモアがありそれでいて繊細な世界がとても好きです。今まで素敵な作品をありがとうございました！これからもオムニバス作品も応援しています！ (2018年11月16日 23時) (
レス) id: 4ee63399c0 (このIDを非表示/違反報告)
Ramu(プロフ) - お疲れ様でした！シノユズさんの作品、シノユズさん本人、本当に大好きです！これからも陰ながら応援してます。 (2018年11月15日 22時) (レス) id: a6556beed0 (このIDを非表示/違反報告)
nyaaaaaaa(プロフ) - 素敵な作品を有難うございました(^^)SNYZさんのカッコいいようで繊細で優しい表現が大好きです。特に09が好きだったので少し寂しいですが…(;o;)もしいつかまた機会があれば続きを書いて頂けたらなぁなんて…(*^^*)(無茶ぶりすみません苦笑)今後も応援させて頂きます！ (2018年11月14日 0時) (レス) id: 41b196ef5e (このIDを非表示/違反報告)
SNYZ(プロフ) - Chi-Roさん» 初期の作品から...ありがとうございます！自分の世界観を気に入っていただけて、非常に嬉しいです...！応援にお応え出来るよう精進してまいりますね！ (2018年10月10日 10時) (レス) id: 87eaa377ed (このIDを非表示/違反報告)
Chi-Ro(プロフ) - シノユズさん» 中学の時にMINT GREENでシノユズさんのファンになってからずっと読み続けています。他にはないしっとりと心に溶け込むシノユズさんの世界観が大好きです。これからも応援してます！ (2018年10月8日 21時) (レス) id: 635f713535 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：SNYZ
| 作者ホームページ：https://twitter.com/nnn_zcn
作成日時：2018年7月31日 0時
