the GWS Stories. 【名探偵コナン】

撃ち込まれた銃弾 - 2 ページ15

「怪我をしているらしいが、用心棒なんてしていて支障はないのか？」


会計を終え、食料品のつまった紙袋を抱えたAは赤井のその言葉に一瞬だけ、眉間へシワを寄せた。

自分の妹がまた余計なことを言ったせいで、あまり言いふらしたくないこと。

怪我をこの男に知られてしまったのが、気に食わなかったらしい。


「今のところは問題ない」


彼女の愛車、ジープの後部座席へ荷物を運ぶのを無言で手伝う赤井は、視線を一切合わせることなく淡々と答える彼女がどこに傷を負っているのか、様子を伺っていたが、荷物を受け取るために振り向いた彼女にその仕草を拾われてしまうのだった。

どんな人間だって、相手がケガを負ったと聞いたら、『どこへケガをしたのか』気になるものだ。

人一倍観察力に優れたA。

赤井の視線から彼が何を考えているのかを汲み取ることは、容易なことだった。

だから、荷物を座席に置き終えた後、振り返りざまに自分の右腕手首を彼の目の前に突き出すのだ。


「手首、関節がチタン製」


骨の数倍は丈夫だよね、と冗談を軽く交えるAだが、その声はいたって真面目...だったので、赤井は笑顔の一つも浮かべることはできなかった。


「撃たれて、関節が吹き飛んだ」

「手首を狙われるとは、災難だったな」

「まあね。でも、人間の体からは生み出されない素材で、関節を作り直したから、今度はもう砕けない」


飄々とした表情から放たれる言葉には、彼女の行き様、戦場に対する執着心が込められていた。

Aは小さく息を吐いた後、車の鍵をかけ直し、またスーパーの方へ足を向けるのだった。


「どこへ行く」

「一服」


買い物終わりの一服、と背後の赤井の方へ向き直ることなく、軽く手を振るA。

その背中には、他人とは全く違う質でできた『威厳』や『誇り』があったようにも思う。


赤井自身、潜入捜査中に大切にしていた人を失った。

捜査には、それなりの情熱と使命感を持って向き合い、無理な行動もしてきた。

だからこそ、なんとなく彼女の心に抱えられた消化のできない気持ちを少し、ほんの少しは理解できたのである。

生き残るために事件の真相を究明することで報われた赤井と、ただただ生き残るために銃口を向け続け、婚約者の仇を討つことなく帰国したAには、『ほんの少し』の理解が重要だった。



「仕方がない、俺も一服にするか」

「...煙草、身体に悪いよ」

「お前のようなヘビースモーカーには言われたくない」

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