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撃ち込まれた銃弾 - 1 ページ14

日曜の夕暮れ時、スーパーマーケットでAはシリアルをカートへ放りながらため息を吐いていた。

突然、嫌な予感がしたのである。


「...白鮫?」


豆乳を選びながら「嫌な何かが迫っている」のを第六感で感んじた瞬間、Aの耳に届いた声。

それは最近よく会う男の声だった。


「ああ、赤井さん。最近よく会いますね」


彼女の働くカフェの常連に復帰した男であり、用心棒を務めるクラブに突入してきたFBI捜査官でもある彼。

赤井はAの姿を見て、手に持っていたミネラルウォーターのボトルを手の上で小さく揺らした。


「今日は休みか」

「まあ、そうですね」


色々あってお休みです、と彼女はデニムとTシャツの隙間からヘソをのぞかせた。

2人は軽く視線を合わせながら、それぞれの買い物をこなしつつ、短く、簡単な会話を一つ一つ積み重ねるのだった。


「妹は用心棒には反対らしいぞ」

「知ってる」

「なら、なぜ続ける...金のためか?」


無造作に頭の上でまとめられた髪をいじり、彼女はその質問に鼻で笑う。


「まさか。あの仕事は自分のため」


自分の中に染み込んだ緊迫感を程よく生かし続けるための、重要な仕事なのだ。

Aは赤井へ静かに告げて、大きなパックのヨーグルトをカートへ投げ込むのであった。


「そうか」


カートを片手で押し、もう一方の手でサングラスをかける彼女。

赤井から見れば、この女が戦場にいた元軍人には見えなかったが、その貫禄に似たものは彼女の言葉や仕草の中に存在していた。


2人揃ってなぜかスーパーの中を散策する姿。

もしかしたら、他の客からは夫婦やパートナーどうしに見えるかもしれないが、そういう関係に2人はこの時なる気は1mmもなかった。

ある意味、2人は暇つぶしのおしゃべり相手でしかなかったのだ。

2人とも口下手なため、ぶっきらぼうな返しや、短い会話を少しずつ積み重ねるだけだったが。

一応『おしゃべり相手』ではあったらしい。


「赤井さん、スナイパーだった?」


ミネラルウォーターを抱える彼の腕を見て、何か気になることを見つけたAは、視線は合わせないままに口を開いた。

どうやら、彼の腕にあった『痕』が気になったらしい。

ライフルを長時間握った経験のある人間によく見られる痕だ。


自分の腕とは真逆の腕にその痕があるということは、彼は左利き。

そして、ライフルを相棒に仕事をすることがあるのだろう。

Aは1人、頭の中でそんな推理を展開するのだった。

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(プロフ) - 完結おめでとうございます!シノユズさんが創り出すユーモアがありそれでいて繊細な世界がとても好きです。今まで素敵な作品をありがとうございました!これからもオムニバス作品も応援しています! (2018年11月16日 23時) (レス) id: 4ee63399c0 (このIDを非表示/違反報告)
Ramu(プロフ) - お疲れ様でした!シノユズさんの作品、シノユズさん本人、本当に大好きです!これからも陰ながら応援してます。 (2018年11月15日 22時) (レス) id: a6556beed0 (このIDを非表示/違反報告)
nyaaaaaaa(プロフ) - 素敵な作品を有難うございました(^^)SNYZさんのカッコいいようで繊細で優しい表現が大好きです。特に09が好きだったので少し寂しいですが…(;o;)もしいつかまた機会があれば続きを書いて頂けたらなぁなんて…(*^^*)(無茶ぶりすみません苦笑)今後も応援させて頂きます! (2018年11月14日 0時) (レス) id: 41b196ef5e (このIDを非表示/違反報告)
SNYZ(プロフ) - Chi-Roさん» 初期の作品から...ありがとうございます!自分の世界観を気に入っていただけて、非常に嬉しいです...!応援にお応え出来るよう精進してまいりますね! (2018年10月10日 10時) (レス) id: 87eaa377ed (このIDを非表示/違反報告)
Chi-Ro(プロフ) - シノユズさん» 中学の時にMINT GREENでシノユズさんのファンになってからずっと読み続けています。他にはないしっとりと心に溶け込むシノユズさんの世界観が大好きです。これからも応援してます! (2018年10月8日 21時) (レス) id: 635f713535 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:SNYZ | 作者ホームページ:https://twitter.com/nnn_zcn  
作成日時:2018年7月31日 0時

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