◆過労3 ページ20
息を切らし慌てて部屋へと入って来たのは胡堂主だった
「Aが倒れたって？見た人が教えてくれたのっ」
相当慌てて帰って来たのだろう…
彼女にとって身近な肉親みたいなものだからな…
「落ち着くのだ…大丈夫だ。日々の過労だそうだ」
「本当に？…ぐすっ」
ベッドに横たわる彼女の脇で顔を埋め、心配の声を上げる
落ち着かせるように肩に手を掛けてやると、顔を上げ涙目で此方を向いた
「彼女は常に一生懸命で、自分の不調さえ気付く事が出来なかった。色々やるべき事もあったし、それほど皆の為に動いていたのだ…堂主が責任感を感じる必要はない」
「それなら鍾離さんもでしょ？異変に気づいてたのにーって思ってるんでしょ？」
「胡堂主には敵わないな…ふふ。その通りだ…彼女の痛みは彼女しか分からない…我々は理解してやる事しか出来ないからな」
「なら、私が替わりに…その理解者になるよ」
グシッと涙を拭うと彼女の額に手を当てる
「1番の理解者になる…鍾離さんにこの立場は譲らないから！」
そう告げるとまた慌てて部屋を出て行った
「ふふ…慌しい娘だ」
『……せんせ…』
「気が付いたか？」
『ふ…たおに……お礼…』
「それは、お前が元気になってから伝えるんだ」
カチャ…
目覚めた彼女を起こし、薬とコップを渡す
『……むぅ…』
一気に飲み干すと眉間に皺が寄る…
良薬口に苦し、白朮殿が調合した薬だ早く良くなるだろう…
「暫く安静にとの事だ…ゆっくり休むと良い」
『…うたって…』
「…んっ…⁈」
熱で朦朧としているのだな…
他でもない彼女の頼みだ………いやしかし歌か…
『〜〜♪〜♫〜』
君が歌うのか…
『スヤァ……』
「ふふふっ……」
俺はあの魔神達が恐れた王なのだぞ？この娘に振り回される時が来るなんてな…
彼女の胸元に手を翳すと優しく微笑み言葉を綴った
「もう容赦はしないからな…
黄昏の鋭い瞳孔が彼女を捉える。
宝石の様により一層輝きを魅せると
彼女の額に岩元素のマークが浮かび、消えた。彼女のもつ
彼女を護る為だ…
『…ん』
「君で最後にしよう」
おやすみと眠る彼女に口付けを落とすと部屋を後にする
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作者名：紺翠 | 作成日時：2023年2月17日 7時
