◆歌姫15 ページ13
「その彼女は今どこに？」
「あぁ…ちょっと用事があるって急いで走って行ったよ」
《ごめん皆んな！私直ぐ行かないと行けなくて…また明日！》
「慌ててたから私はてっきり鍾離さんの所に行ったのかと思ってたけど？」
「ふむ…すれ違ってしまったか？探してこよう…では俺はこれで失礼する」
くるっと振り返り彼女の気配を探ると、彼女が居るであろう場所へと足を運んだ
───────……
この辺で良いかな？
人気のない場所でキョロキョロと確認し、彼を呼ぶ
『魈！魈っ』
「ここだ」トッ
屋根から可憐に降りると、彼女の元へとやってきた
「そ…その…見事だった」
『あ…ありがとう(照』
えへへと笑う彼女に彼もまた釣られて微笑む
『あ…あのねこれ。魈に…』
「開けても良いか？」
『う…うん』
その箱の中には夜泊石で出来た勾玉が二つ入っていた
「これは？」
『鍾離さんの真似事になっちゃたんだけど、魈に形のある物を贈りたいなって思って…このサイズなら邪魔にならないし…魔除けの石の形にしてもらったの！ここに紐を通すんだよ』
「…ふむ。受け取っておこう…お前からの贈り物だ。やぶさかではない」
これは恩返しだ
こんな物では返せないくらいの恩が私にはある
形ある物で残したかった…これはほんの一部
『魈。助けてくれてありがとう』
「！………あぁ。では、またな」
いつものようにひと撫でしたあと、額にキスをし
その場にを後にした…
『さて、また急いで戻らなきゃ』
次は露店を回ると約束した彼の元へと大通りに出た時だった
「そこのお嬢さん」
『はい？』
声をかけられ、振り返るとそこには全身を覆いつくほどのマントと深く被られたフードで見えるのは口元…
声からして男性…
その男性に呼び止められ、足を止める
「先程は見事な歌声でした。惚れ惚れしましたので歓喜のお言葉をと……思いまして…」
『あ…ありがとうございます…』
「少々お時間を頂けますかな？」
い…嫌な気…がする
『っ… す…すいません。私…急いでますので…』
本能が危険だと言っている
直ぐにでもこの人から逃げないとっ…
「それはそれは…呼び止めて申し訳ない。だが、此方も貴女に用がある」ガシッ！
『っ⁈…やっ』
腕を掴まれ勢いよく引き寄せられる
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作者名：紺翠 | 作成日時：2023年2月17日 7時
