61.罪・唇(夢野幻太郎) ページ13
きみがおとなになってしまったなら。
きみはぼくのことを忘れてしまうのだろうか。幼いころの希望のように散ってしまうのだろうか。もしもそうだとしたら、ヒトの感情はなんて浅はかなのだろう。それなのにどうして美しいのだろう。ああ、どうも、Aがわたしから離れてゆくような気がしてならない。もう手の届かないような別の世界へ。
人間の行為は愛に基づいて成り立っているらしい。だれかに検閲されたその愛で頬をなで口づけ抱きしめて眠りに就くという。結局、ここでは皆きれいごとでまどろんで狂っているのだ。
(…ぼくがいまから、ほんとうの『愛している』ということを教えてあげるからね)
なにも知らないままのきみだけに。
俺は彼女をゆっくりと抱きしめた。わたしが彼女の身長にあわせて背を曲げているせいで、ぼくたちの頬がふれあう。Aは無知で無垢だ。黙って身を預けているその頬には春のはじまりのような静けさと冷たさが住まわっている。わたしのそれとはまるで真逆だった。
そしてしばらくそうしたあと、俺は体を離して彼女の目を見た。陽の光もろくに刺さないこの不健康な空間で、二人は本当に正常だったのだろうか？Aの瞳孔は黒くただぼくのぼんやりとした影を吸い込んでいた。艶艶とまなこを動かし不思議そうな表情で、捕食者のわたしを見詰めていた。
『わたしがおとなになったらね、』
その先はもう、何も言わないで。ぼくはとどめをさすようにくちづけをした。それで世界からは音が全く消え、ここからすべてが始まるのだと思った。夢のような体温の変移、知らなかったきみのくちびるの感触、全身を這いまわるあまい麻痺、永遠に絡みつく罪悪という枷、そのどれもがたまらなくいとおしい。胸のあたりがあんまり疼くので、もう一、二度、くちびるを重ねた。そのたびに響きわたるAの吐息や、湿ってくぐもった音がその混乱を加速させてしまう。
「おとなになったらね、こういうこともするんだよ。」
ぼくの声はいつになく低く、明らかな欲求をはらんでいた。Aのうるんだ眼が俺をどんどん壊して殺してゆく。良心常識公序良俗、すべてがひび割れてゆく。
きみがまだ息を整え切れていないのにぼくはまたかさねてしまう。いままで優しかったのは、ぜえんぶ、嘘だってことにしておいて。共有する唾液がかきみだす。心中を引っ掻き回す。きみに大人の階段から突き落とされたわたしはまぶたを閉じた。…
暗い春だ。きみはおとなになる。
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43沿い(プロフ) - 名前さん» リクエストありがとうございます！ユメゲンちっと久しぶりですね…！了解したしました！ (2021年3月15日 1時) (
レス) id: 4f61e3adde (このIDを非表示/違反報告)
名前 - 毎日覗いています!急なリクエクトなんですけれど崇拝型というか盲目的というかそういった風の夢野幻太郎さんってお願いできるでしょうか… (2021年3月9日 8時) (レス) id: bc5ff4fc8b (このIDを非表示/違反報告)
43沿い(プロフ) - ユウコさん» 返信遅くなりましてすみません…山田了解いたしました！がんばって書きます！ (2021年3月9日 2時) (レス) id: 4f61e3adde (このIDを非表示/違反報告)
ユウコ - どうも初めまして!いきなりですがリクいいでしょうか？バスブロに愛されてるお話しは出来ますか？ヤンデレでも大丈夫です。もし無理ならヤンデレな山田一郎で彼女を誰にも取られたくない、可愛い過ぎて見られたくないから閉じ込めた、みたいなお話しでも良いので。 (2021年2月28日 21時) (レス) id: 72567c030f (このIDを非表示/違反報告)
43沿い(プロフ) - さやかさん» はじめまして！ヤンデレ好きな方に出会えてうれしいです！二郎くんがんばって書かせていただきますね！ (2021年2月27日 0時) (レス) id: 4f61e3adde (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：43沿い | 作者ホームページ：https://plus.fm-p.jp/u/43zoiand3eda
作成日時：2020年1月12日 3時
