キミのこと好きだから (ページ15)

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愛しい人ページ15

それから数日後。

監督〝OKOK！完璧だよ〟

キスシーンは撮り終えた。

《どうかしましたか？》

「えっ？」

《いや...台本には涙なんて書いてないので。》

監督〝いやいや、俺が目指してたのは

それなんだ。今のを採用するよ〟

「はい...もう今日は撮影終わりですよね。

先に帰ります。」

〈あれはもしかして好きな人いるとか？〉

＊

［待ってください！！］

「ごめん。1人にさせて。」

そうよ。

私たちは何も始まってなかった。

ただの知り合いなんだから。

次の日

久しぶりに実家に戻ると、

母〝仕事は順調？〟

「うん。やっぱり実家はいいなぁ。

戻って来よっかな。」

母〝それより早く孫を見せてちょうだい

お父さんも早く孫が見たくてそればっか。

いい人いないの？役者さんとか〟

「いないわよ。仕事が楽しいから、

今は恋愛は。」

母〝そうやって後回しにするから

30になって焦るのよ〟

「ホッといてよ。私のことなにも知らないくせに

結婚だの早く孫が見たいだの。言わないでよ！！」

夕暮れ時に東京に戻った。

思い出しただけでも泣いてしまう。
自分でもわかってるから尚更悔しい。

駅を出ると外は真っ暗だった。

東京に戻ってきただけでなんかホッとする。

ふと、視線をずらすと、

『お帰り。』

「岸くん...」

駅前に岸くんがいた。

「どうしているの？」

『会いたくて。マネージャーさん？と

知り合いになってここに来たら会えるって

言われて。』

「いつの間に知り合いに。」

『僕に会いたかった？』

うんと頷く。

ニコッと微笑む彼、
いつしか私は好きになっていた。