23 ページ23
何か失ってしまったような
大事なことを忘れてしまったような
心にぽっかりと空いてしまった空間に何かはいっていたような
今年の誕生日を迎えたころからそんなことを思い出すようになった
ただその反面、前から私を覆うように漂っていた靄はいつの間にか消えていて
すっきりとしていた
なぜそうなったのかは分からなかった
そして今年の誕生日の前日、勝手に学校を無断欠席して何故か1人で遊園地へ行った
制服のポケットには観覧車の半券が入っていて確かにその日遊園地に行った記憶は
あるもののなぜ一人でそんなことをしたのか思い出せず
涙を流しながら帰ってきた私を見た両親は怒ることも無く
仕事の休みを増やして私と向き合ってくれた
先月無事に大学のAO入試を終え合格しのんびりと高校最後の冬休みを迎えることになった
「ママー私の靴どこー？」
『上から2番目にしまうよって昨日言ったでしょ』
「あ、本当だあった」
『どこ行くの？』
「ココア買ってくる」
『また？あんまり飲みすぎると太るよ』
「行ってきまーす」
外に出ると冷たい風がコートやマフラーの隙間から入ってきて
カイロを持ってこなかったことに後悔する
でもこの寒い中で飲むココアが世の中で1番幸せな瞬間でもある
最近パパやママそれに友達にまで表情が変わったね、明るくなったね
と言われることが多くなった
自覚はないものの確かにあの靄は消えたし誰かに相談するということもできるようになった
でもやっぱり何かが足りなかった
明日で今年が終わるというのに街中はしんと静まり返っている
いつもの自販機が目に入ってきたころ珍しく先客がいるのが見えた
金色の髪を揺らし寒そうにマフラーに顔を埋めるその人はちらっとこちらを見ると
背を向けていた自販機に急に振り向き小銭を入れだした
「(なんか...変な人...)」
その人の後ろに並ぶと『あ！』という声とガコンッという音が同時に聞こえた
「(びっくりした...違うの出てきたのかな)」
そう思いながら順番を待っていると急に振り向いたその人は
手にコーラを持って私をまっすぐと見め
『あの...20円貸してください...』
そう言って恥ずかしそうに微笑んだ
fin
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 478人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おさる - 一回だけじゃなくて何度も見たくなるようなお話でした。次回の小説も楽しみにしています！ (2018年9月27日 10時) (
レス) id: 61e830c75b (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - らむさん» そう言っていただけて嬉しいです（；；）ありがとうございました！ (2018年7月19日 11時) (レス) id: 6fe35b1797 (このIDを非表示/違反報告)
らむ - 感動……すごく面白くて楽しかったです！！映画で見たいくらいです(*^◯^*)大好きなテテでこんな素敵なお話書いてくださったことに感謝です！！ (2018年7月19日 1時) (レス) id: a7a9735bca (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - ゆんさん» お付き合いありがとうございました(>_<) (2018年7月17日 18時) (レス) id: 67f3dc7c68 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - とても素敵なお話をありがとうございました^_^ (2018年7月17日 17時) (レス) id: 8e5cc19314 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白 | 作成日時：2018年6月23日 18時
