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第30話【tyun side】 ページ30

散々飲んで、食ってをして酔いが回ったメンバーは動く事もダルいのかリビングで横になり始めていた。
きっとこのまま泊まりになって雑魚寝でもするんだろう。
食事中ずっと傍に置いていたTシャツをリュックにしまおうと、荷物がある寝室に向かう。
そういや静岡の土産まだ余ってたな、なんて考えながらリュックを開けた。


シルク「A」

『あら、いつの間に』

シルク「皆寝ちまったからベッド独り占めしようかなって」

『ひでぇの、他人の家なのに』


鼻で笑って丁寧に丁寧にTシャツを畳んだ。
この服がある事が嬉しくて、Fischer'sマークをひと撫でし、自然と頬が緩む。
すると突然ぽん、と頭に手を置かれ顔を上げるとベッドに腰掛けたシルクがいつも以上に優しい顔をして頭を撫でてきた。
ちょっと気持ち悪ぃ、と笑ってやろうと思ったのに撫でられる手は止まない。


『なんスか』

シルク「我慢してんなって思って」

『はぁ?何を?』

シルク「もっと素直になっていいんだよ、俺の前では」

『十分話したよ』

シルク「いーや?本当のお前を知ってんのは俺だけだからな」


全然理解出来ん、と首を傾げる。
いい加減撫でる手を退かして欲しいけど、こんなにニコニコなシルクを見るのも久し振りな気がして、仕方なくこいつの気が済むまで黙っててやろうと再び視線をTシャツに戻した。


シルク「ごめんな、A」

『何が?』

シルク「独りにさせちまって」

『あ、』


何を切っ掛けとしてなのかは分からない。
分からないけど、突然涙が溢れてきてTシャツを濡らしてしまった。
抑えようと色々と関係の無い事を考えるも、そんな気配も無いまま勝手に涙が頬を伝う。
普段こいつから謝る事がないからだろうか。
それとも心が痛い程こいつが優しい表情をしているからだろうか。

それとも、やっと自分の居場所がある事に気付いたからだろうか。

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作者名: | 作成日時:2018年8月18日 1時

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