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「天真愛漫」 ページ18

遠くから青春の音が聞こえる放課後。
西陽の差し込んだ教室で、私はある物を発見した。

『..手帳?』

伏見の机の上にあった夕焼け色の手帳。
机の端にぽつんと置かれたそれを私はそっと手に持つ。
表紙には何も書いていないが、これはやっぱり伏見の物なのだろうか。
危険な好奇心が私の心を揺さぶる。好奇心は理性と絡み合い、私は少しの間逡巡した。
..少しくらいなら大丈夫だよね。
結局、私の理性は好奇心に簡単に負けてしまった様だった。ゴクリと唾を飲み込んで、私は日記を開く。

幸か不幸か(・・・・・)、果たしてそれは伏見の物だった。

○月✕日
今日は席替えでAの隣になった。
能力を使うこと無く隣になる事が出来て本当に嬉しい。矢張り俺の恋は主様にも味方されているんだ!
ここまで来れたんだ。絶対に落としてやる。

○月△日
文化祭の出し物はお化け屋敷に決まってしまった。
本当はメイドカフェが良かったけれど、よくよく考えれば他の奴らにAのメイド服を晒してしまう危険性があったからお化け屋敷で良かった。
それに前と比べて少し心を開いてくれた様な気もする。このまま行けば、きっと彼女は手に入る。

×月□日
今日はAと話をして、彼女の本心を掴むことが出来た。矢張りAは上辺だけでは騙せなかった様だ。でも、流石の彼女もあれには騙されたらしい。本当に哀れで可愛らしい。俺だけの、愛し子。


「...A?」


背後から聞こえてきた声に、全身が粟だった。
私は振り向きたくない思いを必死に抑えて振り向く。
そこには矢張り、伏見が居た。

『あ、伏見。ど、うしたの』

伏見は此方に歩みを進め、まるで縫われた様にその場から動けない私の手から日記を抜き取る。
そしてそれをパラパラと捲って、やけに柔らかい笑顔で私に問い掛けた。
「こんなところで何してたんだ?下校時間はとっくに過ぎてるだろ?」
『あ、いや...』
頭が真っ白になって何も考えられない。だってあの日記に書かれていた事を鵜呑みにするんだったら、間違いなく彼は。
「..もしかして、知っちゃった?日記に書いてあった事」
彼が見せた笑みは恐ろしい程虚構味が無くて、私はそれに余計恐怖を抱く。なんて返せば良いのか分からなくて呻き声を漏らしていると、伏見は困ったように笑った。

「全部、忘れてくれないか?ちょっとばかり都合が悪いんだ」

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みそ漬けキュウリで殴る(プロフ) - 蒼空麗さん» お褒めの言葉ありがとうございます…!!こちらこそ読んでいただきありがとうございます!!そう思ってくださったのなら幸いです…泣 (2021年10月11日 15時) (レス) id: ed00509d09 (このIDを非表示/違反報告)
蒼空麗(プロフ) - 愛おしさしかないですありがとうございます (2021年10月6日 16時) (レス) @page26 id: ee676be244 (このIDを非表示/違反報告)
みそ漬けキュウリで殴る(プロフ) - 狛々さん» 読んでいただきありがとうございます!!本当ですか!?めっちゃ嬉しいです…泣考察要素もありますのでぜひぜひ考察していって頂ければと思います! (2021年10月6日 7時) (レス) id: ed00509d09 (このIDを非表示/違反報告)
狛々(プロフ) - 1話読み進めるごとに一番右の星押してました。この作品を読むだけで頭がよくなった気がします!!!! (2021年10月5日 22時) (レス) id: 0c572bf162 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みそ漬けキュウリで殴る | 作成日時:2021年10月5日 19時

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