愛した彼は、人ではありませんでした。 (ページ40)

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「…あぁ、あのさA、何か気を紛らわせるような話ない？違うことを考えないと

戻ってあの男たちを引き裂きそうだ。」

『え、えっ、えーと…、あ、シートベルトしめなきゃ。』

「…シートベルト？…ははっ(笑)…君こそ閉めなきゃだろ、」

『え？あっー、うん。』

慌ててかちゃりと閉める。

テヒョンも片手で運転を続けながらシートベルトをつける。

『…そういえば、テヒョンはなんであそこに？』

「……たまたまだよ。」

『たまたまであんなところ来ないでしょう。』

「……怒らない？」

『…何を？』

「俺は、本当に、Aのことがただ心配で…」

『…つけてたの？』

「ただ本当に心配で…、離れてはいたんだけど、そしたらあいつらがAに
ひどいことをしようと考えてたから…」

『…考えてた？え、何でわかったの？』

「……。」

『ここで黙秘は通用しないわよ。』

「はぁ…。……あいつらがAを襲って、ていう心の声が聞こえてきたんだ。

だから、急いでAの元へ向かった。」

『…とりあえず、ありがとう、助けてくれて。』

そのまましばらく無言が続いたが、ふと寒気を感じて、暖房の温度をあげようと

『温度、上げていい？…寒くて、』

といいながら調節ボタンに手をのばすと、ちょうどテヒョンもあげてくれようと手を
のばしていた。

指先が触れた瞬間、

『っ、冷たっ……』

「…っっ」

少しだけ触れたテヒョンの指先は氷のように冷たかった。

そのあともまた無言が続き、テヒョンはミナとサナとの待ち合わせの店へと車を回して

くれた。