愛した彼は、人ではありませんでした。 (ページ38)

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『……あった。』

だいぶ古そうな装丁のその本は”広安里周辺の伝承と生き物について”。

「…あざーしたぁ…。」

本を買って帰るころにはだいぶ外が暗くなってしまった。

元々細い路地なため、かなり暗くなっている。……早く帰った方がよさそう。

早歩きで路地を歩いていると、

「ねぇねぇ君、こんなところに一人？」

「危ないよー？俺らが楽しいところに連れてってあげる。ほら行こ？」

……あなたたちのほうがよっぽど危なく見えるんだけど。

まぁ、いかにも柄の悪そうな、ちゃらっちゃらした男が…5人。

「ほーら、こんなとこにいないで。おいで！」

『…っ、ちょっと！』

腕を引っ張られ、それを振り払う。

「抵抗すんなって、ほら！」

『ちょっ、やめて！離して！』

男2人に掴まれ、3人に囲まれる。

……やばい、

そう思った瞬間

ききぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ！！！

すさまじいブレーキ音の方向へ顔を向けると

『っっ、』

「「「「「うわっっ！…なんだ？」」」」」

眩しいっ。目がくらむような光の中から現れたのは、見覚えのある車。

私たちの目の前で急ブレーキをかけ止まるその車。

運転席からでてきたのは

『……テヒョン？』