愛した彼は、人ではありませんでした。 (ページ26)

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「A、今日はゆっくりしてなね。何か後遺症でもでてくるかも…」

『はいはい、大丈夫ですよー。』

「あー、あとね……、」

『何？』

「……母さんに電話しといて。』

『え、まさか連絡したの？』

「いや、だってさ！Aが車と車の間で押しつぶされたなんて聞いたらさ…！」

『あー、うん。わかったよ。あとで無事だって言っとく。』

うちの母さんはなかなかの心配性で、母さんたちの転勤が増えて私が一人になることを

避けるため、はじめはついていかないつもりだったらしい。

…再婚ほやほやなのに。

それが申し訳なくて、動かない兄さんのもとへ越してきた。

寝る前母さんに電話すると、案の定

「Aっっ！？大丈夫なの？車につぶされて内蔵が破裂しそうだとかなんとかって」

一体どんな情報だ。

『落ち着いて、母さん。私は無傷よ。車に潰されてないわ。ぶつかってもいない。』

「本当に？ほんとに大丈夫なの？」

『周りの人が大げさに連絡しただけよ。まったくの健康体。』

「それだけしゃべれてるなら、本当に無事なのね。…よかったわ。」

内蔵破裂なんて言ったら電話どころじゃないだろう…。

母さんのもとを離れてからたいして時間は経ってないけど、

声を聴くのが、すごく久々に感じた。