知ってはならない。【3】

Another2-10 ページ48

私は、一旦そこでメールを読むのを止めた。

拓磨の妙な私への信頼の意味が、やっとわかる。
知ることが吉か凶かはわからないけど

私はもう一度深呼吸をして、メールの続きに目をやった。


『春美さんが仕掛けられていたのは、盗聴器です。』


「え...」


私は慌てて、バッグとジャケットから例のものを取り出した。

今両手に持っているこの2つのUSBのようなもの

これが

盗聴器...?


私は手を震わせながら2つの盗聴器を置き、携帯を持ってメールの続きを読んだ。

『盗聴器が仕掛けられていると知りながら、知らないふりをする生活をするか、今すぐ盗聴器を壊してやめさせるか。どっちの選択肢をとるかは春美さんに任せます。ただ、春美さんなら、どちらが懸命かおわかりでしょう?盗聴を止めさせたところで彼はきっと他の手を使ってくる。このまま知らないふりをすることをおすすめします。また、他の場所にも隠されている可能性が高い。どこに仕掛けられているか把握するだけでもなにか価値はあるでしょう。怪しまれない程度に盗聴器の位置を把握し、彼に聞かれてはいけないことは1人であっても絶対に口にしないこと。そして、仕掛けられているのが盗聴器だけとは限りません。カメラ、GPS...色々考えられます。常に監視されていると思って、生活なさってください。
まあ、春美さんは、そんなことわかっていますでしょうが...

それと、もしもう一度、彼から逃げる手を考えるのなら、最大限協力します。
そうじゃなくても、何かあったらすぐに連絡してください。

僕はあなたの味方です。忘れないでください。』


吉井先生からのメールは、そこで終わった。

私は涙が出そうなところギリギリで、何とか耐えた。

カフェの中だ。しかも1人。絶対に泣くわけにはいかない。
しかも、泣いたりしたら拓磨に聞かれてしまう。
もしかしたら私が今、どこでなにをしているのかもわかってるんじゃ...


背筋が凍るような思いだ。

拓磨はやっぱり、私を信頼なんかしちゃいない。
形を変えて、24時間ずっと私を監視していたんだ...



「はぁ...」

独り言さえも、呟けなくなった。

もちろん拓磨には、「今すぐ盗聴をやめて。」なんて言えない。言うつもりもない。
私の選択肢は2つ。

このまま何も知らないふりをして、今まで通りの生活をするか
もう一度、どこかに逃げる計画を立てるか。


今すぐ結論なんて出せない。

私は荷物をまとめて力なく立ち上がり、カフェを去って家に向かった。

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