Another2-8 ページ46
「...っ」
中に入っていたものを目にして、私は息を飲んだ。
これはまさに、さっきバッグから出したのと同じもの...
黒く小さい、USBのようなもの。
私はこれを握りしめて、拓磨がいる部屋の方に顔を向けた。
服やバッグにこんなものが最初から付いているとは考えられない。
私の周りで誰か細工するとしたら...やっぱり...
私は眉を潜めたところで、首を振って目を逸らした。
人を怖がったり疑ったりするのはもう面倒くさい。
これが何かわかったらすぐに拓磨に聞こう。
床に散らかした服を片付け、バッグの中から携帯を取り出す。
そしてブラウスについていた黒い物体を写真に撮り、吉井先生にメールを送った。
謎のものはスーツのジャケットのポケットに入れ、一応元あったところに近いところで保存することにした。
ふすまを開いて、何事もないような顔をしながらリビングに戻る。
拓磨はちょうど晩ご飯の準備を終わらせ、テーブルの上にはご飯が並べられていた。
「今日何も手伝いできなかった...ごめん」
「いいよ別に。僕今日は仕事早めに終わったしね。」
拓磨のその言葉を聞くと、私はふと疑問を抱いた。
私が目を丸くしたのに気づいた拓磨は、少し笑いながら言った。
「春美って本当に顔に出やすいよね...どうしたの、なんか気になった?」
私はいや、と軽く首を振り、椅子を引きながら言った。
「今日の朝珍しくわざわざ家に仕事持ち帰ってたから...大事な仕事してるとかで忙しいんだと思ってた。」
「あぁ、その仕事は今日までに終わらせなきゃだったんだよ。朝早起きしたおかげで、ノルマより早く終わらせていただきました。」
拓磨は笑顔でそう言って、私と反対側に座った。
「そうだったんだ。まあどっちにしろ、ありがとう。」
私がそういうと、拓磨は笑顔でいいえ、と言い、二人でいただきますを言った。
拓磨の笑顔が、私は一番苦手だ。
もちろんその笑顔が純粋なこともあるとは思うが、その笑顔の真意は私には絶対にわからない。
裏があるのか、ないのか。はたまたその裏とはなんなのか。
怖い笑顔も、純粋な笑顔も彼は持っているとわかっているからこそ、彼の作り出す表情を読み解くことは困難なのだ。
今日もたわいもない話をしてご飯を食べ、一緒に食器を片付けてそれぞれ寝床につく。
私は一生こんな生活を続けるのだろうか...
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fruit(プロフ) - いちうさぎさん» いちうさぎ様!!また私に作品を作る機会を作って下さって本当にありがとうございました!私はまだ今作と前作しかありませんが...楽しんでいただけると嬉しいです!!本当にありがとうございます!!(告白は快くお受け致します) (2020年7月23日 0時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
いちうさぎ - fruitさん» はあ・・・好きです(唐突な告白)まじで面白かったです!他の作品も今から読ませていただきます!執筆、本当にお疲れ様でした!(((o(*゚▽゚*)o))) (2020年7月22日 19時) (レス) id: d12e33a79f (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 水の犬。さん» もちろんしっっっっっっっっっかり覚えさせて頂いております水の犬。様!!毎回毎回丁寧なコメント本当にありがとうございます...凄く嬉しいです!「こちらの作品が大好き」もうこれ以上ない嬉しいお言葉です...幸せをかみ締めております...ありがとうございます... (2020年7月20日 22時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
水の犬。(プロフ) - こんばんは、お久しぶりです。覚えていなかったらすみません。番外編も読んでいてすごくゾクゾクしました(いい意味です)!改めてこちらの作品が大好きだなと感じました。 (2020年7月20日 18時) (レス) id: 88a373f457 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - いちうさぎさん» お待たせいたしました!!!遅くなってしまって申し訳ありません...気に入っていただけるかはわかりませんが、読んでくださると嬉しいです!リクエストありがとうございました! (2020年7月20日 17時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:fruit | 作成日時:2019年8月13日 23時