Another7 ページ33
「ちょっと...おばあちゃんに連絡するね。」
私は電車の中で拓磨にそう言い、メッセージアプリを開いて吉井先生とのトークを開く。
拓磨に画面が見えないように、少し傾けて文字を打った。
『拓磨が家まで来ちゃって、新幹線の駅まで送るって言われて離れられませんでした。一旦新幹線の駅まで行ってから向かいます。すみません。』
送信するとほぼ同時に、既読は付いた。
『懸命な判断です。時間はありますのでお気になさらず。そちら側に車で向かいます。駅から少し離れたところに集合しましょう。』
私はすぐに返信した。
『はい。ありがとうございます。』
送信すると、既読はついたが返信が来なかったので、私は携帯を鞄に戻した。
その後は拓磨とも特に喋ることないまま、電車は新幹線の駅に到着した。
「持つよ。」
座席から立ち上がろうとした瞬間に、拓磨は私の荷物を持ち、再び主導権を握った。
本当にこの男は隙がなく頭がいい。
早く拓磨から離れたい...
新幹線の改札に到着すると、拓磨は電光掲示板を見ながら言った。
「どれに乗るの?」
私は一緒に電光掲示板を見ながら言った。
「うーん...特に決めずに来たの。30分後のあれに乗ろうかな。ありがとう、ここまで来てくれて。」
感謝の気持ちなど全くないままそう言うと、拓磨はうんと頷いた。
私は早く離れたい一心で、笑顔で言った。
「じゃあ、ここでさよならするね。切符も買わなきゃだし。ばいば」
「最後に1つ。最後に、聞いていい?」
言葉を遮られ、私は動揺した。
なんとか目を見開く程度で済ませたが、驚いたのがバレただろうか...
「な...なに?」
私が小さく言うと、拓磨はまっすぐ私の目を見て口を開いた。
「まだ、思い出さないの?」
「えっ...」
即答できなかった。
こんなこと、久しぶりに聞かれた。
なんなら記憶を取り戻してからは初めて言われた。
私は迫ってくるように高鳴る鼓動を、必死におさえつけた。
「お...思い出してないよ?なんで?久しぶりに聞かれたな、それ。」
私はへへ...と笑った。
「ふーん...そっか。じゃあ、まあ行ってらっしゃい。」
笑顔の消えた拓磨は、そう言って私から目線を外した。
「う...うん。行ってきます。」
私は逃げるようにその場を離れ、切符売り場に向かった。
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fruit(プロフ) - いちうさぎさん» いちうさぎ様!!また私に作品を作る機会を作って下さって本当にありがとうございました!私はまだ今作と前作しかありませんが...楽しんでいただけると嬉しいです!!本当にありがとうございます!!(告白は快くお受け致します) (2020年7月23日 0時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
いちうさぎ - fruitさん» はあ・・・好きです(唐突な告白)まじで面白かったです!他の作品も今から読ませていただきます!執筆、本当にお疲れ様でした!(((o(*゚▽゚*)o))) (2020年7月22日 19時) (レス) id: d12e33a79f (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 水の犬。さん» もちろんしっっっっっっっっっかり覚えさせて頂いております水の犬。様!!毎回毎回丁寧なコメント本当にありがとうございます...凄く嬉しいです!「こちらの作品が大好き」もうこれ以上ない嬉しいお言葉です...幸せをかみ締めております...ありがとうございます... (2020年7月20日 22時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
水の犬。(プロフ) - こんばんは、お久しぶりです。覚えていなかったらすみません。番外編も読んでいてすごくゾクゾクしました(いい意味です)!改めてこちらの作品が大好きだなと感じました。 (2020年7月20日 18時) (レス) id: 88a373f457 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - いちうさぎさん» お待たせいたしました!!!遅くなってしまって申し訳ありません...気に入っていただけるかはわかりませんが、読んでくださると嬉しいです!リクエストありがとうございました! (2020年7月20日 17時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:fruit | 作成日時:2019年8月13日 23時