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第99話 ページ4

1ヶ月ほど前。

拓磨は凜の後ろ姿を眺めながら、声をかけるのを躊躇っていた。

しかし心の中で覚悟が決まり、凜の元へ行こうと1歩進んだ。





その瞬間...




学習室に入ってきたものの、長い間座らない人間に違和感を持った凜が

何気なく後ろを振り向いた。

「あっ」

一瞬にして目が合ってしまった拓磨は、思わず声を漏らした。




凜はその目の前の人物を目に捉えてすぐに、目を見開いて固まった。

「...拓磨...?」


凜は持っていた本を力なく床に落とし、思考回路がストップしたようにただただ震えた。

心の中の何かが壊れて、今まで溜まっていたものが溢れてきそうだった。

「な...なん...で、拓磨...が、こんな、ところに...なんーーー」
「話は後で。」


拓磨は声を震わせる凜のところに駆け寄り、耳元で囁きながら、凜のペンを持って凜のノートに書いた。


【今日20:00、ここの前で。】


拓磨はそれだけ書き置きして凜の顔を一瞬見ると、すぐに踵を返して学習室を出た。




拓磨は、震え上がるような自らの感情を抑えることができなかった。

ずっと探していた凜をこんな所で見つけて、呼び出すことさえ出来たのだ。
それも、凜とはもともと全く関係の無い、中学の頃に作った春美との縁を頼りにして。

我ながら、強運だと思った。

凜のことが大好きな春美には申し訳ないが、凜には徹底的に吐いてもらうつもりだ。

今まで何をしていたのか。
誰が真実を知っているのか。
今後どうするつもりなのか。

もし自分に危害が及ぶようなことがあれば、真っ先に潰していかなければならない。

「何年...必死で1人で握りつぶしてきたと思ってんだ...」

拓磨は歩みを止めて、強く握った拳を自分で見つめた。


ーーー車に細工をしてしまってから今まで、必死で、凜たった一人しか真実を知らない状況を作ってきた。

凜が誰かに言いそうになるのを何度も止めたし、言葉は交わさないにしても、常に監視していたつもりだった。

でも、凜は、ある日突然、自分の目の前で母親に伝えてしまった。
忘れもしない。母親の自分を見つめる絶望の目。


拓磨は、迷うことなく母親を消した。
事故を装い、自らが証人となる状況を作った。


それは凜に思い知らせるためでもあった。
お前は誰にも他言してはいけない。
僕は容赦ない。
凜が1人で、抱えていくしかないのだ...と。

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設定タグ:ミステリー , 高校生 , 謎解き   
作品ジャンル:ミステリー, オリジナル作品
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fruit(プロフ) - いちうさぎさん» いちうさぎ様!!また私に作品を作る機会を作って下さって本当にありがとうございました!私はまだ今作と前作しかありませんが...楽しんでいただけると嬉しいです!!本当にありがとうございます!!(告白は快くお受け致します) (2020年7月23日 0時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
いちうさぎ - fruitさん» はあ・・・好きです(唐突な告白)まじで面白かったです!他の作品も今から読ませていただきます!執筆、本当にお疲れ様でした!(((o(*゚▽゚*)o))) (2020年7月22日 19時) (レス) id: d12e33a79f (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 水の犬。さん» もちろんしっっっっっっっっっかり覚えさせて頂いております水の犬。様!!毎回毎回丁寧なコメント本当にありがとうございます...凄く嬉しいです!「こちらの作品が大好き」もうこれ以上ない嬉しいお言葉です...幸せをかみ締めております...ありがとうございます... (2020年7月20日 22時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
水の犬。(プロフ) - こんばんは、お久しぶりです。覚えていなかったらすみません。番外編も読んでいてすごくゾクゾクしました(いい意味です)!改めてこちらの作品が大好きだなと感じました。 (2020年7月20日 18時) (レス) id: 88a373f457 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - いちうさぎさん» お待たせいたしました!!!遅くなってしまって申し訳ありません...気に入っていただけるかはわかりませんが、読んでくださると嬉しいです!リクエストありがとうございました! (2020年7月20日 17時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:fruit | 作成日時:2019年8月13日 23時

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