第114話 ページ19
私は、なかなか震えない喉を必死に鳴らして、掠れた声で訴えた。
「やめて...」
「え?」
「もう...やめて。」
「なんで?」
「もう認めるから...やめて...」
陥落した。
私はもう完全に拓磨の手中。
自分を保つなんて無理。
結局私は自ら消えれないのだから、この人に支配されるしかないんだ...
「もう、いいから...。拓磨の支配の中で、生きてくから...」
私は拓磨の胸で泣き崩れた。
足の力が抜けて、床に倒れ込みそうになるのを、拓磨が支えた。
今私の体重は、完全に拓磨にかかっている。
拓磨は易々と私を支えながら、肩を震わせた。
「ふふ...春美、本当に弱いよね。昔からそうだった。指摘したのは今回が初めてだけど、春美はいつも自分を正当化して逃げてきてたよね。滑稽だよ、春美。本当に滑稽だ。」
そう言って拓磨は、いっそう抱きしめる力を強めた。
私には、泣くぐらいしかできなかった。
力も入らない、声も出ないこの体は、完全に拓磨が支えきっていた。
私が黙っていると、拓磨は再び私の頭に顔を寄せた。
「春美、でもね...」
より拓磨に近づけられていた私の耳に、拓磨はさっきより一段と小さい声で呟く。
「僕は、君を手助けしてあげられる。」
私は言葉の意味がわからず、顔も上げずに黙っていた。
また訳の分からない拓磨の、訳の分からない言葉だ。
そう決めつけた。
だけど...
「不幸だった、の一言で、片付けられることだってあるんだよ...」
そう決めつけたけど
どうも言葉に違和感を覚える。
意味がわからないけど
どこかで聞いたことのある...
【不幸な交通事故】
「僕の母親が、そうだったようにね。」
【不幸な火災】
そう言って拓磨は私を解放し
うっすらと笑うと
「え...?」
私の後ろに広がる階段へと
.
.
.
.
.
.
.
躊躇なく私を突き落とした。
「ーーーっ....!!!!!!」
私は抵抗する暇もなく
足を宙に浮かせ
そのまま階段の下に全身を打ち付けられた。
「僕にとってはこっちの方が、都合がよかったんだよ。」
遠のく意識の中で、そう聞こえた気がする。
「これは貰っていくよ。」
目の前の男は、そう言って
血まみれになったノートをバッグから抜き取った。
そんな気がしながら
私は体を起こすことも出来ないまま
ゆっくりと瞼を閉じた。
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fruit(プロフ) - いちうさぎさん» いちうさぎ様!!また私に作品を作る機会を作って下さって本当にありがとうございました!私はまだ今作と前作しかありませんが...楽しんでいただけると嬉しいです!!本当にありがとうございます!!(告白は快くお受け致します) (2020年7月23日 0時) (
レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
いちうさぎ - fruitさん» はあ・・・好きです(唐突な告白)まじで面白かったです！他の作品も今から読ませていただきます！執筆、本当にお疲れ様でした！(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2020年7月22日 19時) (レス) id: d12e33a79f (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 水の犬。さん» もちろんしっっっっっっっっっかり覚えさせて頂いております水の犬。様!!毎回毎回丁寧なコメント本当にありがとうございます...凄く嬉しいです!「こちらの作品が大好き」もうこれ以上ない嬉しいお言葉です...幸せをかみ締めております...ありがとうございます... (2020年7月20日 22時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
水の犬。(プロフ) - こんばんは、お久しぶりです。覚えていなかったらすみません。番外編も読んでいてすごくゾクゾクしました(いい意味です)！改めてこちらの作品が大好きだなと感じました。 (2020年7月20日 18時) (レス) id: 88a373f457 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - いちうさぎさん» お待たせいたしました!!!遅くなってしまって申し訳ありません...気に入っていただけるかはわかりませんが、読んでくださると嬉しいです!リクエストありがとうございました! (2020年7月20日 17時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fruit | 作成日時：2019年8月13日 23時
