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第108話 ページ13

拓磨の感情が掴めない私は、不安と恐怖に襲われたまま、ただただ拓磨の腕の中にいた。

「無理よ...信用できない。代諾者を危険に晒すわけにはいかないし、私も拓磨に監視されたくない。」


拓磨を言いくるめる言葉なんて出てこない。
ただ、否定する言葉しか思い浮かばなかった。


優勢を保つ拓磨は、笑みを崩すことなく続けた。

「...代諾者はまだしも、春美は、もう僕の下で過ごすしかないんだよ。」

「え?」

「もう、遅い。」


私は目を見開いて拓磨の顔を見た。

もう遅いってどういうこと...


拓磨を見つめながら硬直する私を見て、彼は依然楽しそうに言った。

「既に引越しの準備ができてる。おばあちゃんにも言って、こっちで暮らすことにしたんだよ。高校の編入手続きもすぐ終わる。もうすぐ春美の同級生だよ。」

「...っ!?」


私は再び拓磨を押しのけた。
すると今度は、拓磨も力を緩め、自ら進んで私から離れた。

私は何も言えない。
拓磨の顔を見つめながら、ただ後ずさりすることしか出来ない。

「春美...怖くないーーー」
「いやっ!!!やめて、来ないで!!」

もう一度私に近づこうとする拓磨を、私は両手で制止した。

さっきの何十倍も、恐怖に包まれている。

私は両腕を前に突き出しながら、ゆっくりと拓磨から距離を取った。





凜も...同じ気持ちで...

凜も...

凜もこんなに...

いや、これ以上に怖かったのかもしれない...




「痛っ」

私は後ずさりを続けるうちに、屋上の縁の、柵に背中をぶつけた。

顔をゆがめながら、ふと自分の背後に目線をやる。

するとそこには、1階の花壇が見えた。
そう、ちょうど、あの日に凜が倒れていたところ。




凜は、この恐怖の中、自ら命を投げることを選択したんだ...。




静かに息を飲むと、拓磨が距離を取ったまま口を開いた。

「春美、危ないよ。こっちにおいで。」

そう言って拓磨は両手を広げた。




突然、斎藤春美にかけられた、究極の2択。


凜とほぼ同じこの状況下で、

彼女と同じ道を選ぶか
一生拓磨の監視下で生きていくか。

私は何も言わずに、唇を噛んだ。

拓磨はずっとニコニコしながら両手を広げ、私を待っている。




日が沈んでから何時間と過ぎ、風も吹いているのに、体温が一向に下がらない。

冷や汗が、私の額をなぞった。

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設定タグ:ミステリー , 高校生 , 謎解き   
作品ジャンル:ミステリー, オリジナル作品
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fruit(プロフ) - いちうさぎさん» いちうさぎ様!!また私に作品を作る機会を作って下さって本当にありがとうございました!私はまだ今作と前作しかありませんが...楽しんでいただけると嬉しいです!!本当にありがとうございます!!(告白は快くお受け致します) (2020年7月23日 0時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
いちうさぎ - fruitさん» はあ・・・好きです(唐突な告白)まじで面白かったです!他の作品も今から読ませていただきます!執筆、本当にお疲れ様でした!(((o(*゚▽゚*)o))) (2020年7月22日 19時) (レス) id: d12e33a79f (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 水の犬。さん» もちろんしっっっっっっっっっかり覚えさせて頂いております水の犬。様!!毎回毎回丁寧なコメント本当にありがとうございます...凄く嬉しいです!「こちらの作品が大好き」もうこれ以上ない嬉しいお言葉です...幸せをかみ締めております...ありがとうございます... (2020年7月20日 22時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
水の犬。(プロフ) - こんばんは、お久しぶりです。覚えていなかったらすみません。番外編も読んでいてすごくゾクゾクしました(いい意味です)!改めてこちらの作品が大好きだなと感じました。 (2020年7月20日 18時) (レス) id: 88a373f457 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - いちうさぎさん» お待たせいたしました!!!遅くなってしまって申し訳ありません...気に入っていただけるかはわかりませんが、読んでくださると嬉しいです!リクエストありがとうございました! (2020年7月20日 17時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:fruit | 作成日時:2019年8月13日 23時

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