知ってはならない。【3】

Another1 ページ27

記憶を失ってから1年が経った時。


拓磨は高校三年生の時に大学を受験するも浪人が決まり、結局私と同じ時期に受験、そして同じ大学に進学することになった。
彼は現役の時、合格はほぼ確実だったのだが...何故か不合格だったうえに、浪人すると大学を下げてわざわざ私と同じ大学を受けた。

当時は私に合わせてくれるんだな、としか思ってなかったが、今思うと背筋が凍る思いだ。



ーーー時は進み、大学2年の夏のこと。

私は拓磨と一緒にテスト勉強をするため、一人暮らしをする彼の家に訪れていた。
一人暮らしにしては大きすぎる家で、二階建てになっていた。

拓磨が私から離れるのは、トイレの時ぐらい。
ずっと拓磨の殺風景な部屋に興味を持っていた私は、ここに来る度彼がトイレに行った隙に部屋を物色してみていた。

「...平松くんに悪いかな。」

少しの罪悪感を抱きながら、ちょっとずつ部屋の色んな引き出しを開けたりした。
でもいつも必要最低限のものしか入ってなくて、結局何も得ることなく終わっていた。



...ただ。この日だけは違っていた。

私はこの日も拓磨がトイレに行った隙に部屋を見渡した。

彼の家に来るようになって日もだいぶ経っている。
あらかた部屋は探検し尽くしていた。

いつものようにぼんやりと部屋を見渡していると、ふと机の上が目にとまった。

「...あんなの、前まであったっけ...?」

机の上には、ペン立てと、ブックスタンドと数冊の本しかなかった。
でも今日は、1冊のノートも立てかけられている。
「平松くんのノート、あんまり見た事ないな...」

私はゆっくりと立ち上がり、机の上のノートに手を伸ばした。



ーーーすると。

「...っ!?」

私は思わず手を引っ込めた。


ノートの表紙の半分が赤く染っている。
この色は...血?

私は息を飲んで、再びノートに手を伸ばした。
平松くんはトイレついでに飲み物をついでくると言っていた。
彼が戻ってくるまでもう少しあるだろう。


「なんで、ノートに血がつく...」

そう呟きながら、ノートに手を触れた。









瞬間。







「ーーーっ!!!!」



突然、全てを思い出した。



「凜...」




そう私が漏らすやいなや、彼は部屋に戻ってきた。

「...どうしたの?」

机の前にいる私を疑問に思う彼。
私は動揺を必死でおさえて、笑顔で答えた。


「...シャーペン忘れちゃって。借りれるものないかなって。」


この瞬間から、私は恐怖に怯えながら過ごすことになる。

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