知ってはならない。【2】

第49話 ページ3

突如現れた静寂。

結局凜のお父さんとお母さんは、従前戸籍を発行するだけで何も見ないまま帰ってしまった。

私が手に持つ皺ひとつ付いていないB4の封筒が、ずっとこちらを睨んでいる。

私は再び封筒に目を落とした。



ここに、私の知りたい全てがつまっている。
だからこそ、そう簡単には開封できないし、だからといって捨て去るわけにもいかない。

変に持ち歩けばそれだけ漏洩するリスクが増えるわけであって、やはり開封するならこの場しかない。

「見るしか、ないのよね...。」

私は封筒を見つめて唾を飲み込む。

「よし。」

覚悟を決めてぐっと体に力を入れると、私は勢いよく封を開け、一気に全ての資料を取り出した。



資料は全部で2枚。

そこに書いてある情報には焦点が合わないまま、封筒を机の上に置いて資料を両手に持った。

最初に目に入ったのは彼女の本当の戸籍。




彼女の本当の名前は...







「村上、凜...。」





その名前を目にした瞬間、私は何かスイッチが入ったかのように、資料をくまなく読み進め始めた。

彼女が生まれ小学生まで育ったのは意外にもここから程近いところ。

電車で10分、車で15分といったところだろうか。

明日にでも、この住所を訪ねてみよう。



更に読み進めると、代諾者、つまりこの養子縁組をサポートした人名の欄が現れた。

凜の養子縁組を援助した人。
すなわち凜の事情を理解している人...

「っ...」

目を向けると、そこにある名前は、私の知っているものではなかった。

しかし、その職業の項目に引っかかる。

代諾者の職業が

「精神科医...?」

となると、この人が凜の家族だという線が薄まる。
もしかすると、精神安定剤を処方した人も、心理的に救っていた人もこの人かもしれない。

名前の横には、連絡先が明記してあった。

私は直ぐにノートを取り出し、端に電話番号をメモした。

会わない訳にはいかない。
何を得られるかはわからないが、話を聞かなければならない人であることは確かだ...

メモした番号に間違いがないことを確認すると、ノートをバッグに戻して再び資料を手に持った。


代諾者の後に書かれているものは、私にはよくわからない堅苦しいものばかりで、特に得られる情報はなかった。

そこで1枚目をめくり、後ろに回して2枚目を眺めた。

2枚目に書いてあるのは、主に村上凜としての情報だった。

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