第39話 ページ40
彼とのトークは、随分前に途切れていた。
まだ凜が生きていた頃。
2人の記念日が近いということで、川上くんに、凜へのプレゼントを何にすればいいか相談された時の会話だ。
あの頃は、まさかこんなことになるなんてこれっぽっちも思っていなかった...
この2人は多分結婚するだろうと
きっと幸せな未来を築いていくだろうと
信じて疑わなかった...
私はキーボードの上にそっと指を置き、ゆっくりと文面を打ち始めた。
《川上くん...お久しぶり。話したいことが出来たんだけど、今度会えたりする?夏休み中にごめんね。でも、大事な話なの。》
なんとなく何度も誤字脱字がないか確認してから、慎重に送信ボタンを押した。
携帯を机に置き、ふぅと息をつく。
光を失った画面を見つめて、私はゆっくりと目を閉じた。
彼にはどこまで明かそうか。
精神安定剤を服用していたことなんて言うと、川上くんが自身を責めてしまうのではないだろうか。
養子であったことだけ伝えようか。
凜には他に生まれた家があったんだよと
それだけ伝えよう...。
閉じていた目をゆっくりと開け、私はしばらくぼぉっとしてからリビングに戻った。
興味もない報道番組を横目に、寝間着から着替える。
画面の向こう側では、ソフトクリームを持ったアナウンサーが、おいしー、なんて声を上げている。
特に何も思わず、目を逸らそうとした時、突如見覚えのある建物が目に入ってきて2度見する。
「あれ、ここって...」
紛れもなく、私の地元だった。
地元と言っても、今住んでいるこの場所ではなく、中学生まで住んでいた、私の生まれ故郷だ。
何度も行ったことのあるショッピングセンターの1階で、そのアナウンサーは美味しいものを求めて歩き回っている。
特段すごいショッピングセンターである訳では無い。
確かに狭くはないが、別にそんなに大きい訳でもない。
どこにでもある、普通のショッピングセンターだ。
なんで、あんな場所にわざわざ取材なんて...
私は苦笑しながら、脱いだ寝間着を洗面台に持っていった。
洗濯カゴに寝間着を放り込んだところで、私はふと1人の名前が頭に浮かんだ。
「...拓磨...」
そうだ、今報道されている場所は拓磨のいる場所だ。
もしかしたら、拓磨が...
私は急いで部屋に行って携帯を取り、そのまま再びリビングに飛び込んだ。
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fruit(プロフ) - 鳥の子さん» うわぁぁぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます!!そして読みに来てくださってありがとうございました!!自分の作品をこんなに好きって言って貰えるとすごい嬉しいのですね...いますごくテンション上がってます笑コメントもしてくださってありがとうございました!! (2020年1月26日 0時) (レス) id: dc8b637267 (このIDを非表示/違反報告)
鳥の子(プロフ) - 一通り読んで参りました……!好き……。余りにもLOVE過ぎて……。もう説明文の所から夢主ちゃんの覚悟が伝わってきて、けれど最終的には後悔してしまうのだろうな(覚悟ほしていたけれど)とか思っちゃうとLOVE……。更新頑張られてください!! (2020年1月18日 17時) (レス) id: fababa1230 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 凛奈さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!!!凛奈様のような読者様がいらっしゃるので頑張れるわたくしです。これからもどうぞよろしくお願い致します!! (2019年5月28日 17時) (レス) id: 479b2f8b1f (このIDを非表示/違反報告)
凛奈(プロフ) - 更新楽しみにしてます!すんごい面白いし、好きです!! (2019年5月28日 6時) (レス) id: 225bb681ca (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 花風雪 サブありさん» うわぁぁ嬉しいコメント!!!読んでくださって本当にありがとうございます!!!今はテスト前で少し更新をお休みしていますが、来週からまた再開します!まだまだ続きますよ〜!?これからもよろしくお願いいたします!!! (2019年5月26日 7時) (レス) id: 479b2f8b1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:fruit | 作成日時:2019年3月4日 22時