知ってはならない。

第14話 ページ15

震える指でキーボードを打つ。

《じゃあ...今からしてもいい?》

送信すると、既読はすぐについた。

私は何もせずにそのまま返信を待つ。

まもなく、拓磨からのメッセージ。

《いいよ。》

「...っ!」

それ以降拓磨からは返信が来ない。
きっと電話がかかってくるのを待っているのだろう。


私は携帯を握りしめ、電話をかけるボタンを押した。


画面が切り替わり、呼び出し中の文字が表示される。
しかしすぐにその画面も切り替わり、通話中の文字が出た。


「はやっ」


私は慌てて携帯を耳に当てた。


「もしもし...」
『はやっ!って、春美が今からかけるって言ったんじゃん。』


もしもしと言うなり、拓磨がツッコミを入れた。

私は真剣な話をしようと意気込んでいたので、ぎゅっと体に入っていた力が突然弛緩した。


「ご...ごめん。なんとなくびっくりしちゃって。」

『全然いいよ。それより今日はなんで電話したかったの?』


驚くほどスムーズに話を引き出される。

今日はなんで...。
電話したかった理由があることは拓磨にもわかっているようだ。


「今日電話した...のは、謝りたくて。」

『謝る?』


恐る恐る声を出すと、拓磨はすぐに疑問を抱く。
なんのためらいもなく出された声には、緊張など全く含まれていなかった。

久しぶりに話す緊張も、少しこじれてしまった関係を戻そうとする意気込みも、全て私だけのようだ。

拓磨のはっきりとした声に動揺したのを隠しながら、私は言った。


「この前...最後に電話した時。拓磨は私のことを思ってくれてたのに、私は自分のしたいことに反対されたからってつまらない意地をはっちゃって。拓磨のこと考えずに発言してた。拓磨は間違ったこと言ってないよ。あの時素直に謝れなくて...ごめんなさい。」


私が言い終わると、少しの間沈黙が流れた。
拓磨はなんて言い返すのか考えているんだろう。
私は黙って拓磨の返事を待った。


『...うん。とりあえずわかっててくれてよかった。僕も春美の大切な親友を傷つけるような言い方してたもん。反省してるよ。こうやって先に謝ってくれたのも春美だし...いつもごめんね。』


拓磨まで謝った...

狙いは別にそこではなかったけど、私の言うことを素直に受け止めてくれたことはわかった。

そして私は、今日最も言いたかったことを言おうと口を開いた。

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