第35話 ページ36
私のわがままに付き合わせて、2人を巻き込んでいいのだろうか。
凜との信頼関係を壊すことは、2人は心苦しいに違いない。
相当な覚悟を持って、私に提案してくれている。
私にはそれを、受け止める度量があるのだろうか...
「本当に、いいのですか。私の勝手なわがままに付き合って、凜との約束を破ってしまって。」
約束を破る、なんて言い方は悪いとわかっている。
でも、少なくとも2人にはそういう意識がある。
あえて包み隠さず聞く。
2人にはこれ以上無理をさせたくない。
大きすぎる優しさが故に、自身を傷つけてほしくない...
凜のお父さんは凜のお母さんと顔を合わせると、同時に優しく笑った。
2人がどう思っているのかはわからない。
でも、今2人の心が通じあったことだけは私にもわかる...
突如、すっと凜のお母さんが顔をあげて口を開いた。
「春美ちゃん。凜の過去を知りたいのは多分私たちの方よ。私たちが、凜のことを知りたいの。そのきっかけに春美ちゃんを利用してしまっているにすぎないの。これは、私たちが決めて行動することよ。だから、そんなに気に病まないで。春美ちゃんが今回の事故の、凜のことを調べてくれて本当に嬉しいの。あなたはちっとも悪いことなんかしていないわ。本当に、ありがとう。本当にありがとう。」
そう言って、凜のお母さんは、にこっと私に笑いかけた。
あぁ、凜だ。
今の笑顔は、凜がいつも浮かべていたものだ。
ここにいる2人は、間違いなく5年半凜を育てた、優しい家族だ...。
「...こちらこそ、ありがとうございます。凜を、あんなふうに育ててくださって。あんな、私を色付けてくれるような人に出会わせてくださって...」
込み上げてくる涙を必死に抑える。
震える声を力いっぱい押さえつける。
確かに2人は養親かもしれない。
でも、それでも、凜にとって本当の家族に違いなかった。
それは今も同じ。
たとえ2人がどういう行動を取ったって、大切な凜の家族であることに間違いが生まれることは無い...。
私は呼吸を落ち着かせると、ゆっくりと声を出した。
「...知りましょう。凜のこと。凜の過去。そして、凜が何故命を捨てなければならなかったのか、必ず私が見つけ出します。だからもう少し、私に力を貸してください。」
お願いします、と私が頭を下げると、2人は慌てて私に顔を上げさせようとした。
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fruit(プロフ) - 鳥の子さん» うわぁぁぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます!!そして読みに来てくださってありがとうございました!!自分の作品をこんなに好きって言って貰えるとすごい嬉しいのですね...いますごくテンション上がってます笑コメントもしてくださってありがとうございました!! (2020年1月26日 0時) (レス) id: dc8b637267 (このIDを非表示/違反報告)
鳥の子(プロフ) - 一通り読んで参りました……!好き……。余りにもLOVE過ぎて……。もう説明文の所から夢主ちゃんの覚悟が伝わってきて、けれど最終的には後悔してしまうのだろうな(覚悟ほしていたけれど)とか思っちゃうとLOVE……。更新頑張られてください!! (2020年1月18日 17時) (レス) id: fababa1230 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 凛奈さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!!!凛奈様のような読者様がいらっしゃるので頑張れるわたくしです。これからもどうぞよろしくお願い致します!! (2019年5月28日 17時) (レス) id: 479b2f8b1f (このIDを非表示/違反報告)
凛奈(プロフ) - 更新楽しみにしてます!すんごい面白いし、好きです!! (2019年5月28日 6時) (レス) id: 225bb681ca (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 花風雪 サブありさん» うわぁぁ嬉しいコメント!!!読んでくださって本当にありがとうございます!!!今はテスト前で少し更新をお休みしていますが、来週からまた再開します!まだまだ続きますよ〜!?これからもよろしくお願いいたします!!! (2019年5月26日 7時) (レス) id: 479b2f8b1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:fruit | 作成日時:2019年3月4日 22時