知ってはならない。

第24話 ページ25

さすがにおこがましいだろうか。

いつでもいいとは言われたものの、明日、など急すぎる。
多少の配慮は必要だろう...

そう思い、1週間以内に設定してもらおうと伝えようとする。
しかし、私のその声は凜のお母さんの声でかき消された。


「出来るだけ早い方がいいのね。じゃあ明日はどう?明日ならお父さんもいるから、私とお父さんと春美ちゃんで話せるわ。」

「え...」

あちらの方から明日を設定され、私は戸惑って言葉を詰まらせた。
直ぐに返事しない私を不審に思ったのか、凜のお母さんは再び口を開いた。

「あら、急すぎたかしら。本当にいつでもいいから、春美ちゃんの好きな日を...」

「いいえ、明日でいいです。明日がいいです。急になって申し訳ありません。」

別日になりそうな前に、私は咄嗟に受け入れて強行突破した。
明日なら話が早い。今日中に話したいことをまとめて疑問もすぐに解決する。

「わかった。じゃあ明日待ってるわね。10時頃でいいかしら。」

私はすぐに返事する。

「はい。では10時頃に伺います。急なお願いを引き受けてくださってありがとうございます。」

私がそう言うと、凜のお母さんはふふっと笑って返した。

「いえいえ。春美ちゃんも凜のためにありがとうね。では、失礼しますね。」

凜のお母さんの言葉に続けて、私は失礼します、と一言言って電話を切った。




もし私が考えていることが本当だったら
明らかにされたら
事態は思っていたより大きなものになる。

夏休み中だけど凜の彼氏の川上くんとも話した方がいいかもしれない。


とりあえずは明日のこと。
明日凜の両親に聞きたいことをまとめようと、私は目の前の椅子に座った。


引きだしからルーズリーフをだし、机の上のペン立てから1本シャープペンシルを取ってカチカチと押した。

まず、第1に聞きたいこと。それは...



凜は普段「お母さん」と呼んでいるのに、ある日「ママ」と呟いたのは何故か。
心当たりはないか。



そして、これは私の推測にすぎないが
深く考えすぎだと笑われるかもしれないが

ママ、と呟いたこと
「戸籍」の本をよく読んでいたこと
精神安定剤を服用していたこと
心理カウンセリング本を多読していたこと

これらを繋げると

一つの事しか私には思い浮かばない...。









凜は、山田家の生まれではないのではないか。

凜が「お母さん」と呼ぶ彼女は、本当の「お母さん」ではないのではないか...。

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