どうせ今だけ【月島蛍】 (ページ1)

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金曜日の5限目。
先生にバレないように欠伸をしながら窓の外へと目を移す。

高校生活が始まって1週間ほどした頃に担任の先生がクラスの親睦を深めると言う理由で席替えをして、真ん中の列の真ん中ら辺だった席が今では窓側の後ろから二番目という良席となった。

前には意地が悪い月島がいる。
彼はクラス、いや1年生の間から人気だ。なにせ、高身長でクール、顔も小さいし何を考えているか分からない顔はとても綺麗だ。おまけに頭もいい。

ぼーっと月島の後ろ姿を見ていれば急に背中が動いて目が合った。

月島「ねえ、当たってるけど」

「え、どこ？？」

月島「頼み方ってもんがあるんじゃない？」

そう言って嘲笑する月島は憎たらしい。こういう時ぐらい素直に答えてくれたっていいのに。

月島「ここ」

「あ、明智光秀です」

珍しく素直に教えてくれた月島に驚きながらも席に座る。

「どうした、なんか嫌なことでもあった？」

月島「人が優しく教えてあげたんだからお礼くらい言いなよ」

「それはありがとうだけど…」

黙っていればイケメン、という言葉はまさにこの人の為に作られた言葉と言っても過言ではないと思っている。
月島は口を開ければ私を馬鹿にしてくる。

月島「この借りはちゃんと返してよ」

「…これが目的だったのか、！」

思わず少し大きな声を出してしまえば、私の周りの席の人が何事だとちらっと見てくる。そんな視線にお構い無しに、月島は私をバカにする言葉を次々に放つ。

月島「当たったのに気付かないとかどんな事考えてたんだか」

月島は呆れたような顔で私を一瞥する。なんで当たったのに気付かなかっただけでこんな言われないといけないのだろうか。まるで月島は大罪を犯したような言い方をしてくる。