弐ノ型 ページ4
・
幸せが壊れる時はいつも血の匂いがする。
「こんなあばら屋に人間が居たのか。」
縮れた黒髪、赤い猫のように細い瞳孔。
人間の顔貌かおかたちをした化け物、そんな言葉が合っている気がする。
私は匂いから人間ではないと察した。
鼻をつんざくようなキツい匂いだったからだ。
「逃げて、皆!」
私は人生で初めて、こんなに大きな声を出したかもしれない。
皆は何が何だか分からずに寝ぼけていた。
その間に_____
「竹雄!」
竹雄が殺された。
「花子!」
花子が殺された。
「母さん!」
母さんが殺された。
「茂!」
茂が殺された。
「禰豆子、六太を連れて逃げなさい!」
せめて二人だけでも
そう思って私は鬼に掴みかかり、爪を立てる。
「お姉ちゃん!!」
「早く逃げて!」
「貴様、誰に触れている…?」
「…ぅ、ぐっ」
触手のような肉塊が固まったようなどちらにせよ気色の悪いモノに首を締め上げられる。
鬼の動きを止められたのは刹那の一瞬。
私は己の無力さを呪った。
「ははっ、はははははははっ!」
「…にがそんなに可笑しい……!?」
「身体が弱くて役立たず、助かるはずもなしに自己満足な自己犠牲をする。これを滑稽と言わず何を言うのか。
いや、『出来損ない』か!
お前ば死にかけの鼠のようだな。
キィキィとよく喚く。」
横目で見えたのは____
家屋の入り口に二つの着物が見えた。
「六太!禰豆子!」
二人だったのだ。
兄さん、どうかここへ来ないで。
もう皆、死んでしまった。
私ももうすぐ死ぬ。
鬼の手によって_____
皆、守れなくて、長女なのに、無力なお姉ちゃんで、ごめんね。
ささやかな幸せさえ、こうも理不尽に奪われるのか。
父さんから受け継いだ耳飾りにそっと触れる。
「ごめん、なさい_____」
涙が溢れて、唇から血が滴るくらいに強く噛む。
悔しい、どうして?
そんな思いは真っ白な雪に消えてく。
「…貴様も家族の元へ行くがいい。」
薄れゆく意識の中、沸々と怒りが湧いてきて____
その後の事はあまり、覚えていない。
ただ、意識を失った事は、確かだった。
388人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月花月 - 神作品だ!! (2020年7月22日 23時) (レス) id: 87d7912e2b (このIDを非表示/違反報告)
茉鈴(プロフ) - 緋月。緋月の館さん» 次女ですけど。 (2020年7月12日 19時) (レス) id: 3c50c30f7a (このIDを非表示/違反報告)
茉鈴(プロフ) - 緋月。緋月の館さん» 私もです。2、3歳から9歳か8歳の途中まで喘息でよく風邪とか咳、鼻水出してました。部外から失礼しました。 (2020年7月12日 19時) (レス) id: 3c50c30f7a (このIDを非表示/違反報告)
抹茶タピオカ2号(プロフ) - 茶々さん» とても面白かったです( ≧∀≦)ノも、もしかして血?! (2020年7月11日 20時) (レス) id: 48661705e7 (このIDを非表示/違反報告)
緋月。緋月の館(プロフ) - 夢主にめちゃくちゃ共感する… 私も長女で、しかもすぐ風邪ひいたり病弱で…w (2020年7月11日 20時) (レス) id: e8a2d305fe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:茶々 x他1人 | 作成日時:2020年7月8日 7時