思色の決心 ページ30
(これを全部、あいつがやったのか)
そう思うと、なぜか腹の底からくつくつと笑いがもれてきた。
「フォッサ隊長…？」
隣の隊員の声にも答えずおれは大きな声で笑った。
昔Aが言っていた。
新世界で出会う美しい景色や風景を目の前にすると、いつも大笑いしていたAを不思議に思って、「何を笑ってる？」と質問したことがある。
Aは笑いすぎて出てきた涙をぬぐって言った。
「あまりにも、完全の頼もしさを目の前にしたらね、泣く、とかも忘れて、笑っちゃうんだよね」
(お前が言っていたのはこれなんだな)
抑え切れない愉快な気持ちを孕んだまま、おれは未だに固まりの解けていない周りを一喝した。
「おい！何ルーキーに遅れをとってやがる！！残りの獲物をみすみすとられちゃァ」
ガチャン！！と己の武器を構えた。
葉巻を燻らせ、前方をにらんだ。
口角は自然と上がる。
「白ひげ海賊団の名が泣くぜ」
…
突然の連合軍の急襲。
スペード海賊団の判断はすべて、船長のおれに委ねられた。
「好きにしろ」
ドン！！と武器である薙刀を甲板に叩きつけ、背中越しにおれをにらんだ白ひげ。
船に砲撃を食らいながらも落ち着いているその様。
「立ち去るか。あいつらと組んでおれ達と戦うか」
「…！！あいつらとなん、」
「グラララ…！」
「、！」
か、と続く言葉は、瞬間に向けられた白ひげの笑顔に掻き消えた。
「いつでも帰ってこい。息子よ」
時が止まったように思った。
風に吹かれてなびくそのシンボルマークが、言葉が、背中が、すべてが、焼きついた。
「は、」
「…エース」
巨大な武器を構え男はみるみるうちに敵をなぎ倒していく。
立ち尽くしていたおれに、後ろにいた仲間たちが名前を呼んだ。
振り向くと、そこにいた、仲間たちは皆、笑顔でおれを見ていた。
ぎゅっと強く、拳を握った。
「おれは、」
「エース」
言いかけた言葉を、仲間が遮った。
「お前の心に、おれらは従うぜ」
どこまでも。
そう言われた瞬間、心に、新しい火が燃えた。
拳を握り締め、それに炎をまとった。
おれも今まで見たことのないほど、きれいな火の赤だった。
上を見上げて、その海賊旗を見つめた。
ぎゅっと口を引き結び、思いっきり振り切った。
ゴオッと燃え上がったのは、連合軍の旗だった。
仲間たちから歓声があがり、白ひげの笑い声を背中に感じながら、
おれは敵の船に飛び込んだ。
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Kanae(プロフ) - 珠莉さん» 書き方や自分のお気に入りの言葉回しに注目して頂けたり、共鳴してくださった時が1番嬉しいです.......ありがとうございます。またゆるゆると戻ってきましたので、是非今後もゆっくりとよろしくお願いします (2020年1月30日 3時) (
レス) id: 5290a66d68 (このIDを非表示/違反報告)
Kanae(プロフ) - ヴィジリアさん» わああ嬉しいです、此度の作品は何十年かかるんだと本気で懸念しつつマイペースに書いていきます.......（笑） (2020年1月30日 3時) (レス) id: 5290a66d68 (このIDを非表示/違反報告)
Kanae(プロフ) - いささん» お待たせしすぎてしまい、申し訳ない思いを通り過ぎもはや自分に対する呆れの感情でいっぱいです、（笑）気付いたら2年が経ってしまっていました.......。またゆっくり更新し始めると思.......願います！ (2020年1月30日 3時) (レス) id: 5290a66d68 (このIDを非表示/違反報告)
珠莉(プロフ) - Kamaeさんの言葉の持っていき方、表し方がほんとに好きで前作何周もしてます！！今作もすごく物語に引き込まれます…！！大好きです！続きいつまでも待ってます！無理せず頑張ってください！！！！ (2018年7月26日 11時) (レス) id: bd338d9f04 (このIDを非表示/違反報告)
ヴィジリア(プロフ) - 前作から引き続き読んでいる者です！今回のお話もとても面白いです。更新、待っていますね！ (2018年6月23日 18時) (レス) id: 93a99db6fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Kanae | 作成日時：2017年6月25日 11時
