椎鈍色の暗示 ページ27
｢サッチ、あの、大丈夫、｣
｢...、｣
サッチ隊長！と叫ぶ声が
ところどころから聞こえる。
サッチがあたしのことを
苦しそうに見つめるからなんとなく
考えてる事は、分かる。
あたしが、戦場がダメなことを、
彼は気にかけてくれてるんだ。
そう思うと、申し訳なさ？ううん、
なんていうか、もっとちゃんとしなきゃ
って気持ちにおされて、
あたしはずっとさっきよりも強い目で
彼の目を見返すことができた。
｢大丈夫。みんなが呼んでる。...行って｣
｢！...、...っ、なんかあったら呼べよ。すぐ駆けつけるからな｣
｢はは、...！サッチ、こういう時、ほんとにダーリンみたい｣
｢！...ったく、｣
彼はより一層高くあがった自分の名前に
押されるようにあたしの頭を
いっかいだけぐしゃ、と撫でて、
その場から走り去った。
それはあたしも同じだった。
船のそばに大砲の玉が落ちて飛沫が
そこらじゅうからあがっていた。
どんどん人が増えていく甲板を
走り抜けながら、船内を目指した。
人と人の間をすり抜けながら、
なるべく、なるべく。
逃げることだけを考えた。
でも刹那、あたしの側の船の淵に
敵の大砲があたって爆発する。
爆音と爆風が、体を耳を、
さすようにつんざいた。
『僕と』
｢...！｣
なるべく。なるべく。
『お付き合いしてください』
思い出さないように。
ばっと顔を上げると、そこには
敵の第一線がすぐそこまで迫ってた。
みるみるうちに甲板に乗り上げてくる
海賊連合の男達。
その目は血走って、いったい、
この白ひげ海賊団がなにを、なんて
思ってしまうぐらいだった。
体の震えが止まらない。
ああ、なんで。
いい加減慣れてよ自分。
さっきサッチに大丈夫って言ったのに。
途端、あたしの目の前に、
甲板の床を叩き割る勢いで
大男が降り立った。
その手にはあたしの背くらいもある
サーベルが握られてて。
その刃が、赤い何かで
錆び付いてるのを見て、あたしは一気に
体の血の流れが止まった気がした。
男が叫び声をあげてそれを振り上げた。
｢...！！！｣
『ずっと待ってます』
ああ、そう言ったあの人は、
あたしの力を見て、去ってしまった。
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Kanae(プロフ) - 珠莉さん» 書き方や自分のお気に入りの言葉回しに注目して頂けたり、共鳴してくださった時が1番嬉しいです.......ありがとうございます。またゆるゆると戻ってきましたので、是非今後もゆっくりとよろしくお願いします (2020年1月30日 3時) (
レス) id: 5290a66d68 (このIDを非表示/違反報告)
Kanae(プロフ) - ヴィジリアさん» わああ嬉しいです、此度の作品は何十年かかるんだと本気で懸念しつつマイペースに書いていきます.......（笑） (2020年1月30日 3時) (レス) id: 5290a66d68 (このIDを非表示/違反報告)
Kanae(プロフ) - いささん» お待たせしすぎてしまい、申し訳ない思いを通り過ぎもはや自分に対する呆れの感情でいっぱいです、（笑）気付いたら2年が経ってしまっていました.......。またゆっくり更新し始めると思.......願います！ (2020年1月30日 3時) (レス) id: 5290a66d68 (このIDを非表示/違反報告)
珠莉(プロフ) - Kamaeさんの言葉の持っていき方、表し方がほんとに好きで前作何周もしてます！！今作もすごく物語に引き込まれます…！！大好きです！続きいつまでも待ってます！無理せず頑張ってください！！！！ (2018年7月26日 11時) (レス) id: bd338d9f04 (このIDを非表示/違反報告)
ヴィジリア(プロフ) - 前作から引き続き読んでいる者です！今回のお話もとても面白いです。更新、待っていますね！ (2018年6月23日 18時) (レス) id: 93a99db6fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Kanae | 作成日時：2017年6月25日 11時
