橙色の帽子 ページ25
...
｢降りる。出直す｣
ルーキーくんの言った言葉に、
あたしはなんでか、妙にほんの、
ほんのちょっとだけ、
(ちぇ)
なんて思った。
なんでだろ。
｢ふーん｣
なんでもないふうにそう返して、
あたしはこっそりルーキーくんの
皿の上から肉をひとつだけ盗んで食べた。
...
｢Aー、教えてよお、エースくん、どんなひとだった？｣
｢ほらほら、遠慮してないでさあ、やっぱり近くでみたらかっこよかったでしょ？｣
｢傷とかなおってた？｣
｢むー｣
ルーキーくんの父さんへの攻撃は
みるみるうちに減った。
百回いったぐらいからだ。
｢この船、降りるって｣
朝のナース室。
ルーキー君が来てからというもの、
この部屋は彼の話で持ち切りだった。
そんなにかっこいいかなあ。
毎日朝は眠くていまいち記憶ぼやぼやする。
この船降りるって。
あたしのその言葉に、あたしを取り囲んで
質問攻めにしてた美女たちは石化した。
...
それから１日、また１日、そのまた１日と
たって、たって。ちょうど１週間。
スペード海賊団の船が
モビーの隣に寄せられた。
どうやら、ルーキーくん含め
彼の仲間達の傷の治りを待ってたみたいだ。
カモメが鳴いてる青空の下。
ルーキーくんが、帽子をかぶって、
後ろに自分の仲間を率いながら、
その前にいる隊長たち何人かと話してた。
あたしはそれを随分遠く離れた
船の淵に座って見てて。
なんとなく、短い間だけど、
ルーキーくんと食べた朝ごはんとかを
思い出したりしてた。
結局肉は食べてやったり食べられたり。
そしてまさかのあいつも
あたしと同じ食事中に寝る癖があったり。
あたしの絵、燃やした時、あんなに
申し訳なさそうな顔したり。
なんか怒鳴りあったり
ろくなことしてない気がするけど、
(良い人、だったなあ)
オレンジ色の帽子が照らされる彼はなんとなく、離れてくと、残されたこっちを寂しくさせる何かを持ってた。
｢じゃァ｣
ルーキーくん、...エースが背中を向けた。
振り返りざま、確かに、
確かに、一瞬、目が合った。
｢...ぁ、｣
『じゃァ、』
何でか思い出したあの記憶と、
喉から出た、言葉にならない声。
思わずもう一度息を吸い込んだその時だった。
｢A！！！！！！！｣
｢ぇ、｣
それは、咄嗟に、エースの声なんじゃないかと思った。なんでだろ。期待してたのかな。
でも違った。それは、マルコの声だった。
瞬間、あたしのすぐ隣で大砲が爆発した。
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Kanae(プロフ) - 珠莉さん» 書き方や自分のお気に入りの言葉回しに注目して頂けたり、共鳴してくださった時が1番嬉しいです.......ありがとうございます。またゆるゆると戻ってきましたので、是非今後もゆっくりとよろしくお願いします (2020年1月30日 3時) (
レス) id: 5290a66d68 (このIDを非表示/違反報告)
Kanae(プロフ) - ヴィジリアさん» わああ嬉しいです、此度の作品は何十年かかるんだと本気で懸念しつつマイペースに書いていきます.......（笑） (2020年1月30日 3時) (レス) id: 5290a66d68 (このIDを非表示/違反報告)
Kanae(プロフ) - いささん» お待たせしすぎてしまい、申し訳ない思いを通り過ぎもはや自分に対する呆れの感情でいっぱいです、（笑）気付いたら2年が経ってしまっていました.......。またゆっくり更新し始めると思.......願います！ (2020年1月30日 3時) (レス) id: 5290a66d68 (このIDを非表示/違反報告)
珠莉(プロフ) - Kamaeさんの言葉の持っていき方、表し方がほんとに好きで前作何周もしてます！！今作もすごく物語に引き込まれます…！！大好きです！続きいつまでも待ってます！無理せず頑張ってください！！！！ (2018年7月26日 11時) (レス) id: bd338d9f04 (このIDを非表示/違反報告)
ヴィジリア(プロフ) - 前作から引き続き読んでいる者です！今回のお話もとても面白いです。更新、待っていますね！ (2018年6月23日 18時) (レス) id: 93a99db6fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Kanae | 作成日時：2017年6月25日 11時
