桜色の再来 ページ21
｢A、お前、｣
イゾウが駆け寄ってきたけど、
あたしはまだ固まったままの
黒髪くんに目を向けてた。
｢絵が燃えちまったんだぞ、｣
イゾウの言葉に黒髪くんがまた
苦しそうな顔をしてうつむいた。
その様子にんん、とうなる。
｢ほんとに黒髪くんのせいなの？｣
｢...、？｣
｢イゾウ、あたしの絵燃えちゃうとこしか見てなかった？もしかして｣
｢あ、あァ、｣
｢ねえ｣
くるっとあたしは首の向きをかえて
黒髪くんの前にしゃがんだ。
彼はまっすぐあたしを見てて、
その目がまだ申し訳なさで揺れてるから
ああ、やっぱり、なんて思った。
(優しい人なんじゃん)
父さんに勝つことを焦って、
｢なんで火、出ちゃったの？｣
｢そ、...、それは、｣
ちょっととげとげしてただけなんだよね。
エースが口をつぐむと、
周りにいた仲間たちが
ざわざわと話して教えてくれた。
｢A、おれ見てたけど、さっき先週オヤジにビビって入ってきた新入りがそいつの仲間をバカにしたんだよ｣
｢そしたら�牴亰��瓮�レちまって、｣
｢傷口開いてよ、そんでつい、｣
その言葉にぎゅっと眉にしわを寄せて睨んだ。
...イゾウを。
｢、｣
イゾウは珍しくバツが悪そうに
あたしから視線をそらして。
｢彼、悪くないじゃん、イゾウ｣
｢、...悪かったよ、｣
｢...！｣
ばっと顔をあげてびっくりしたように
すぐに謝ったイゾウを見つめる黒髪くん。
｢悪かった、おれもつい、頭に血、のぼっちまった｣
ぐしゃ、と髪を乱したイゾウに微笑む。
呆気に取られてた黒髪くんだけど
はっとして、すぐさまあたしに向き直った。
｢でも、おまえの、絵、｣
｢ん？｣
あたしは彼に笑った。
イゾウの表情が瞬間、固くなった。
｢大丈夫｣
...
｢描き直せばいいんだから｣
一瞬だった。
おれの目の前で微笑んだそいつの横。
そこはおれが焦がしちまったハズだった。
なのに。
｢...ぇ、｣
そこには、おれが燃やす前の絵があって。
｢え、どうやって、...、｣
今日は呆気に取られることが多すぎる。
なんだ、こいつ。いま、何しやがった。
...何もしてねェのに、絵が戻った。
ふふ、と満足そうに笑ったそいつに
目が離せなかった。
(こいつ、なにもんだ、)
｢エース、だよね名前｣
｢あ、あァ、｣
｢あたしA｣
そいつはくる、と向きを変えて
廊下の向こうへ歩き出した。
｢絵描き。よろしく｣
驚きで、返事もなにもできなかった。
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Kanae(プロフ) - 珠莉さん» 書き方や自分のお気に入りの言葉回しに注目して頂けたり、共鳴してくださった時が1番嬉しいです.......ありがとうございます。またゆるゆると戻ってきましたので、是非今後もゆっくりとよろしくお願いします (2020年1月30日 3時) (
レス) id: 5290a66d68 (このIDを非表示/違反報告)
Kanae(プロフ) - ヴィジリアさん» わああ嬉しいです、此度の作品は何十年かかるんだと本気で懸念しつつマイペースに書いていきます.......（笑） (2020年1月30日 3時) (レス) id: 5290a66d68 (このIDを非表示/違反報告)
Kanae(プロフ) - いささん» お待たせしすぎてしまい、申し訳ない思いを通り過ぎもはや自分に対する呆れの感情でいっぱいです、（笑）気付いたら2年が経ってしまっていました.......。またゆっくり更新し始めると思.......願います！ (2020年1月30日 3時) (レス) id: 5290a66d68 (このIDを非表示/違反報告)
珠莉(プロフ) - Kamaeさんの言葉の持っていき方、表し方がほんとに好きで前作何周もしてます！！今作もすごく物語に引き込まれます…！！大好きです！続きいつまでも待ってます！無理せず頑張ってください！！！！ (2018年7月26日 11時) (レス) id: bd338d9f04 (このIDを非表示/違反報告)
ヴィジリア(プロフ) - 前作から引き続き読んでいる者です！今回のお話もとても面白いです。更新、待っていますね！ (2018年6月23日 18時) (レス) id: 93a99db6fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Kanae | 作成日時：2017年6月25日 11時
