ONEPIECE 〜きみの才能が欲しかった〜白ひげ海賊団編〜

紺鼠色の深夜 ページ16

ある日のことだった。
おれはその日真夜中にあいつを
殺そうと決めた。

卑怯だとか、んな言葉、
そん時のおれの頭には浮かばなかった。

部屋に忍び込んで、いびきをかいた
その男の隣にたった。

手にはナイフを持って、力を込める。

｢...！｣

(殺す！！)

ゴオッとありったけの殺気をこめて
炎を練り上げた瞬間だった。


一瞬にして浮かび上がった部屋の様相。

その時見えた壁の何かに
おれは束の間、気を取られた。




だから、さっきまで爆睡してた
目の前の男の攻撃に反応できなかった。

今までにねェ力でガン！！と
床に押さえつけられた。


「ッ！？……ガハッ！！」

「いいか小僧」

押し付けられた衝撃で
体がまったく動かなかった。
打撃も銃撃も普通は効かねェハズだが、
覇気を使ってやがる、

だが、

(なんでこんな怒ってんだ)

今までどんな奇襲で襲おうが、
どんな時間に攻めようが
全くの無関心でおれに対抗してきたってのに、


「んだよ…ッ！！」

「おれの“部屋”で！！んな火は出すんじゃねェよアホンダラァ！！」

「……！？」

ゴオッっと間近に迫った怒気に
何も言えなくなった。
喉をひっつかまれてて、
呼吸も浅くしかできねェ。

真っ暗な部屋の中でも
そいつの目はギラギラと光った。

「ッ！離せ…ッ！！」

「いつまでもおれに勝てねェヒヨッ子が…」

「おれァ…！！お前に…ッ！！」

「昼間も夜も朝でも、好きな時に来るのは構わねェ。寝込みを襲うのもな」

「…！？じゃァ何でんな…！！怒ってんだよッ…！！」

ずるずるとそのまま床を引きずられる感覚。
何も見えねェがご丁寧に
出口まで運ばれてるみてェだ。

バン！とドアを開け放ったそいつは、
おれを外に放り出した。
ガアン！と背中に衝撃が走って、
でもおれはそいつをにらんだ。

「…！！」

でもそいつのほうが、
何倍もおれを睨んでやがって、
それだけで息も言葉もつまった。

「ここにはおれの“宝”がある。傷でもつけたら承知しねェぞハナッタレが」

「、…！！」

大きな音を立ててドアが閉められる。
静まり返った空間の中で、
おれの心臓の音だけが聞こえた。


ドクンドクン！と耳の中まで脈打つそれに
ギリッと歯を食いしばった。
おれァ、この血が嫌いで仕方ねェ。
嫌いで嫌いで堪らねェ。

(生まれてきてよかったのか)

それを、証明してェんだよ…！！！

歯を食いしばりすぎて、口の奥のほうに血の味がした。

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