囚われ姫とサッカー少年【緑川リュウジ】 (ページ8)

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◇6話◇ ページ8

彼が部屋を出て数分後、退屈凌ぎ出来る物を探そうとベットから降りようとするが玲名に止められる。

「A、今日は安静にしてないと。万が一のことがあって怒られるのは私なんだ」

「やっぱりダメ？」

「そうだな、私もAのことは心配なんだ」

「もう大丈夫よ。それに退屈なのよ。だから城の書庫で本でも読もうかなって」

「本なら私が取ってくる。お願いだから動かないでくれ。今忙しいんだ」

玲名に必至にお願いされ、仕方なくベットに戻る。本当は自分で行きたいが玲名にあまり迷惑はかけたくない。

「分かった、大人しくしてるわ」

玲名が部屋を出た後、布団をかぶる。とりあえず布団に潜ってみるが寝つけず、落ち着かない。ベットに座ってみるも何もすることがない。ふと部屋を見回すと、見覚えのない白衣が椅子に掛かっていた。

「緑川さんの忘れ物かしら……」

白衣が気になりベットから降りて近寄ってみる。そっと手に取り触ってみるとほのかに爽やかな香りがする。とりあえずクローゼットからハンガーを取りだし、シワにならないよう、壁に掛けた。昨日の怪我を引きずりながらもベットに戻ると、タイミングよく玲名が本を抱えて戻ってきた。

「A、これで良いか？」

「えぇ、ありがとね」

「なあ、あの白衣って元からハンガーに掛けてあったか？」

玲名が城の書庫から持ってきた『honey』を読もうとすると、玲名が白衣に気付く。

「椅子に掛かってあったから緑川さんの忘れ物かなって思って。とりあえずハンガーに掛けたの。椅子に掛かったまんまだとあんまりだから」

「そうか。私がいない間に動いたんだな」

「たまたま目に入ったからよ。ただそれだけ」

玲名が怖い顔をしているので、叱られることを覚悟で本当のことを言ったが叱られなかった。

「まあ良い。部屋からは出てないみたいだしな」

玲名はそれだけ言うとお茶を入れる。

「私は書庫の後片付けして来るから大人しくな。でも何かあれば呼んでくれればすぐ駆けつけるから」

どうやら『honey』を探す時に書庫で色々散らかしてしまったのが気になったらしく、元に戻してくるとのこと。玲名が書庫を片付けている間に出してくれた紅茶を飲み、『honey』を読み始めた。