FRONTIER B∀BY (ページ16)

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祈の皐月ページ16

* ゆきや(・・・) 12才 *

LDH本拠地の奥にある小さな祠

ここには御神木・武士桜の灰が祀られている

三代目さんの七人とLIKIYAさんは“ 青の里 ”の出身

代々、守護剣士として御神木と神器を守り続けていた一族だ

でも、ボクが生まれる前、

突然の政府軍の侵略により武士桜と青の里は焼き払われた

とこしえに枯れない武士桜を崇拝する、大和魂の信仰に脅威を感じた今の総理大臣の命令だった

まだ子供だった三代目さんたちは、

お父さんたちの指示で七つの神器を持ってヒロさんの元へ落ち延びたって

総理大臣は神器の破壊も軍に命令していたから・・・

今、その七つの神器は三代目さんたちの腰に差されている

カチン！

七人の剣士が跪き、

七つの神器を掲げる

祠の前には銀色に輝く美しい刀身

鍔には王冠戴く骸骨が彫られている

「ゆきや(・・・)、今年はどう？」

直人さんの質問にボクは首を横にふった

薬草園から持ってきた小さな鉢植えは葉っぱだけ

ずっと蕾が出ない

移植してから何年も経つのに・・・

今年も三代目さんたちをガッカリさせてしまった

「みなさん、ごめんなさい。ボクの力が足りなくて・・・」

「そんなに落ち込むな。これはゆきや(・・・)のせいではないんだから」

直己さんがボクの頭をポンポンした

続いて健二郎さんが、

「お前が奇跡を見せたもんで、ついつい期待してまうんや」

健二郎さんが言う奇跡

でもボクは偶然だと思う

小さかったボクが祠の灰に手をかざしたら、武士桜の芽が出たなんて・・・

成長して苗木になってから、祠から日当たりのいい薬草園に移してボクがお世話している

硝子張りの温室

おばあの薬草園

いつもおばあにくっついて、薬草の手入れを手伝っているボク

不思議だけど、ボクが触れると花たちの成長が早いんだって

おばあやヒロさんが言ってるの

「ねえ、貴方はいつ咲いてくれるの？」

武士桜の苗木に話しかけてみる

はらり・・・！！

葉っぱが一片落ちちゃった

「まだ早いってことかな？」

臣さんが落ちた葉っぱを拾ってつぶやいた

三代目さんたちとLIKIYAさんの願いは武士桜の復活

そして、青の里の復興

御神木を失ったかの地は、昔の面影なく荒れ果てたままだという

*