◆春_8 ページ8
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少し早めのお弁当、お酒を広げながら、
私は川の向こう側。
先程居た、賑わう人集りを見ていた。
『出店があるなら言ってくださいよ…』
この季節、土日のみだがここは出店が出るらしい。
それもそこそこの規模。
少し離れたこの場所からでも美味しそうな物が出店されている事が分かる。
『お弁当…張り切っていっぱい作っちゃいました…』
折角だったらこういう時にしか味わえない物が食べたかった…
残念と言う私に彼は、お弁当の中から卵焼きを摘み、私の口に放り込んだ。
いきなり口の中に入ってきた卵焼き。
モグモグと咀嚼すると、彼好みの甘ったるい味が口中に広がる。
「俺ァこれが食いたかったんだァ」
うめぇ、と卵焼きを頬張る実弥さんを見て、甘酸っぱいような喜びに頬を染めた。
『間接キスですよー』
「あ?直接して欲しいってェ?」
照れ隠しに茶化したように言ったが、
返り討ちにされ、更に照れてしまった。
直接って…そんなの…
『……して、欲しいです、』
頬を染めながらも、
ズイっと実弥さんに顔を近づければ、
実弥さんは、迫る私の顔のほっぺたを形が変わるほど掴んだ。
『……いひゃいれす……』
「……まだ酔うには早ェーだろォ。」
アホな事言ってねぇでさっさと食おうぜェ、とため息をついた実弥さん。
ちょっと本気だったのに…
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乾杯、とお酒の缶を合わせて、
2人分にしては多すぎるお弁当を食べ始めた。
外で食べるお弁当、お酒は、いつもより進む。
気まぐれに髪を乱す風が枝を揺らし、
時折、お弁当の中に入ってくる花弁に風情を感じながら、
私達はゆっくりと流れる時を楽しんだ。
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満たされたお腹を擦りながら、二人でゴロンと横になる。
青空を背景にヒラヒラと舞う花弁が綺麗で、
同意を求めようと実弥さんの方を向くと、パチリと目が合った。
ずっと桜ではなく、私を見ていたのかと思うと、
お酒で少し染まった頬に熱が集まり、
両手で自分の顔を覆った。
『恥ずかしいからそんなに見ないで下さい…!』
「普段ガン見のテメェがよく言うわァ。」
『私がガン見してるのは、実弥さんのお身体です!』
「……そっちのが駄目だろォ…」
指の隙間から見た実弥さんは、真っ直ぐ空を見ていて、
その綺麗な横顔に、ひっそりと私の胸は高鳴った。
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ひよ(プロフ) - たんぼさん» たんぼ様、はじめまして!コメントありがとうございます😭 めちゃくちゃ嬉しかったです♥ ゲスメガネさんの後日談、気にいって頂けたみたいで……前田さん悪役にしちゃったので、救いたくて(笑) こんな過去作をお読み頂き、心より感謝ァ! (1月7日 13時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
たんぼ(プロフ) - とても楽しく読ませていただきました!!何気に最後に登場してきた前田さんが一番面白くて…。ああいった裏話的なもの、大好物です💕読み終えてから「あ、前田さんって別名ゲスメガネのあの人か…」と気づき、鬼滅ファンとして不甲斐ない限りです(苦笑) (1月6日 21時) (レス) @page49 id: e366b8342c (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - みさん» みさん、お返事までありがとうございます♡ わー良かったです!! とんでもないです、、あさひも心配しておりました(泣) 宜しければまたお時間置いて、試してみてやって下さい。そんな風に言って頂き、本当に感謝ァ!!(京華風味) (2022年8月3日 18時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - ひよさん» 読めるようになりました!こちらこそお手数おかけしてすみません🙇ひよさん達の作品大好きです!! (2022年8月3日 18時) (レス) id: 5be9c45ec8 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - みさん» それと可能性のひとつですが、、私達が申請の通知に気づいてから、実際に承認するのはリアルタイムとは限りません。。スマホを見れてない時などは、承認が遅れることもありますので、この件がもしそういうことであれば、そこはご容赦頂きたいと思います。(土下座) (2022年8月3日 18時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:京華・あさひゆうひ・ひよ x他2人 | 作者ホームページ:ありません
作成日時:2021年10月11日 10時