春夏秋冬【ポリス川実弥】

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まあともかく。


そのような複雑な思いは多少ありますけれど、今もAさんに会いたいだとか、どうこうしたいという気持ちはもう一切ございません。




いえ、接近禁止命令が出ているからということではなくてですね。



実は…………


ただただ、申し訳ないことをしたと反省しながら洋服と向き合う内に、ここでの私の『売り』を見つけることが出来たからなのです……!!









「……テ、テレビ……ですか…」


ああ、と眉を寄せて目の前の父は頷いた。


「深夜枠の通販番組で、しかもこのご時世だからマ
　スク着用らしい。お前の顔が目立つことは、あま
　り無いとは思うが……」


まさか取材まで申し込まれるとは嬉しい悲鳴だが、と父は続け、大きな溜息を吐く。


「…わ、私の作ったコスプレ衣装がテレビで……!」



そう、私が「ここで見つけた自分の売り」とはすなわち………!!



「……正直私も、お前のアレがここまで人気商品にな
　るとは思っていなかったんだが……」




コスプレ衣装のデザインと縫製指導なのですよ!!




父に最初に完成品を見せた時は、かなり複雑そうな顔をしていたものですが、意外と融通のきく母が「通販サイトで限定品として試してみよう」と父を説得してくれたのです。


そうしましたら何と何と、即完売ですよ!

両親も他の社員さんも驚くスピードでした。







いや、お恥ずかしながらやはり私には才能があったのです………


女性の魅力を最大限に引き出す服を作り上げるという才能がね………!!





「……私、出させて頂きます。その番組とやらに」


「……まあ確かに、前田縫製工場の大きな宣伝にな
　ることは間違いないが……」


それにしてもコスプレか、と父はまだ腕組みをしたままですが、ここは出演一択でしょう……!


「大丈夫ですお父さん、私が私の芸術品と共に、こ
　の前田縫製工場の宣伝もしっかりして参りますか
　ら!」


ぐ、と父に拳を握って見せましたら、もう一度大きな溜息が漏れたようですが、気には致しません!




不肖の息子ではありますが、必ずやこの前田縫製工場のお役に立ってみせますとも!!!










ーーー もうお会いすることはないのでしょう。


Aさん。


貴女に大変なご迷惑をおかけしてしまったこの私ですが。


………ようやく世のため人のため、お役に立てることを見つけられました。



だからどうか安心して下さいね。

本当に、さようならです。



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