春夏秋冬【ポリス川実弥】

◆冬＿40 ページ41

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触れるだけのキスを重ねられれば、すぐ近くで感じるチョコレートの甘い香りと。


ーーー 実弥さんの熱。



「……は、」


唇が離れてしまったのが淋しくて、実弥さんのシャツをぎゅ、と握った。


「クク、顔真っ赤ァ」


「……実弥さんが、あんなことさせるからじゃない
　ですか…」


もう! と軽く叩いた逞しい腕には結局、閉じ込められてしまう。



温かくて力強い。

それから鼻先に香るいつもの、柑橘系と煙草。



「………やっぱり好きだなぁ」


思わず口をついて出た言葉に、頭の上から降ってきたのは小さな溜息だ。


「……ホント、お前ってヤツはよォ」


はァ、と今度は大きめに吐き出されたそれに、くすぐったくなって笑う。


「笑ってンじゃねェわ、アホォ」


「……うえっ?! ちょ、苦しいです実弥さん!」


ぎゅうぎゅうと音が立つんじゃないかと思う程に強く抱きしめられた、この瞬間だけじゃなく。


「……俺のセリフ取ンなや」


好きだ、と少し掠れた低い声で囁かれた、この瞬間だけでもなくて。


大好きなあなたとはこの先も、こうして一緒に居たいから。





「……今度また、宇髄の店行くかァ」


「宇髄さんの?」


急に何だろう、と腕の中から見上げると、私の頭は大きな手に鷲掴みにされて、またその胸元に戻された。


「……実弥さん?」


いつもの落ち着いたそれとは違う忙しない音が、ダイレクトに伝わってくる。


「前に言われただろォ……次また指輪が必要ンなっ
　たら……店に来いって」


私の右手薬指にはもう、去年贈られたものが馴染んでいて。




……だからその、もう一つというのは。




「…あ、ああああの、それって……!」


もう一度急いで顔を上げ、思い浮かんだその名を言いかけた途端、塞がれるように落とされたキス。




「……そン時ゃ、俺からちゃんと言うからよォ」


今はまだ黙っとけ、と少し顔が赤い実弥さんの言うことは、素直に聞いておこうと思った。









春夏秋冬。

季節は何度でも、巡ってゆくけれど。



その度に違う色を見せてくれる風景を全部、あなたの隣でいつだって。









「……これからは私も、実弥さんに守られるばかり
　じゃないですからね!」


「ふはっ………そりゃ頼もしいわァ」



だがなァ、と不敵な笑みを見せる彼はきっと。



「Aを一生守ンのは…………」



私をいつまでも、"私的警護" し続けてくれるのだろう。




春夏秋冬【冬】完 ひよ



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