春夏秋冬【ポリス川実弥】

◆秋＿28 ページ29

・





『変顔しましょう！』

「態々しねェでも十分だろォ」

『どういう意味ですか！』



ぶはっと実弥さんが笑った瞬間、スピーカーからパシャリと音がした。


え、カウントダウンした…？
これだから古い機種は…
遊園地にあるのって何でこんなに古いのばっかりなの…？



画面を確認すると、
不意打ちにも関わらず、いい笑顔の実弥さん。
いや、不意打ちだからこそのいい笑顔…。



『かわいい…』

「………テメェがなァ」



いい笑顔の実弥さんの横には口を尖らせて映っている私。


どこが可愛いんだ。そう思いながら、次の撮影に向けて軽く前髪を整え、後ろへ下がった。




「A」




後ろにいた実弥さんに名前を呼ばれ、振り向いた瞬間。








………………








互いに無言になると、
カシャっという無機質な音がさっきよりも大きく聞こえた。



『…………撮れちゃいましたよ？』

「ｸｸｯ…記念だろォ？」



顔赤っかァ、と揶揄するように笑う実弥さんに視線を逸らし、横目で画面を見る。


デカデカと映し出させるソレを見て、更に羞恥心が煽られた。



『意外とベタですよね、実弥さん。
ちゅープリなんて学生の時以来ですよ…』

「………」



結局、3枚目は実弥さんに頭を鷲掴みされ、4枚目は私が痛いと抗議している所で、１枚もまともに撮れなかった。


でも、どれも去年より距離が縮まったと感じる。


それが何だかとても嬉しくて。
前回は遠慮があり、殆どしなかった落書きを今回は遠慮せずにする事にした。


黒いペンで、実弥さんの鼻にグルグルと円を書き、頬には3本線。最後に頭に猫耳を書いたり、
盛りメイクをしてみたりと、制限時間ギリギリまで落書きを楽しんだ。



が、残念な事に私の芸術作品は制限時間終了3秒前に実弥さんに全消しされてしまった。






.






落書きを終え、取り出し口へ向かうと、
既にそこには人が居て、私達と手に持っているシートを交互に見ていた。



「すみません、間違えて取ってしまって…」



そう言って渡されたシート。
そこには私達が映っていて。

つまりは、私達のプリクラと言う事で。



どことなく気まずそうに笑っている辺り、きっとこのちゅープリを見られたのだろう。



『……見られちゃったじゃないですか。』

「見られて困るもンでもねぇだろォ」



何でもない様な口振りをする実弥さんを横目に折れないように鞄の中に仕舞ってから、私達は、ゲームセンターを後にした。




.

◆秋＿29→←◆秋＿27

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す