炎柱と隠の関係。【煉獄杏寿郎】

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「このままでは逆上(のぼ)せてしまうな。」



ぐっと近付いて頬を撫でる杏寿郎さんに
違う意味で逆上せてしまいそうになる。


続きは部屋で話そうと言う杏寿郎さんに
私も呼吸を整え湯を上がる。





杏寿郎さんが鬼殺隊を辞める？
炎柱を退く？
今すぐにでも任務に行けると言っていた杏寿郎さんが何故そんな事を考えている....いや、そんな事を考えていたなんて私は微塵にも感じずに知らなかった。



「蝶屋敷を出てから俺は父上と話をしたんだ」と杏寿郎さんが縁側に腰掛け横へ座れと手招きをしている。


そう言えば退院した杏寿郎さんは煉獄家へと一人で行った事があった。






「父上はな、俺を...千寿郎も隊士にはさせたくなかったようなんだ.....」





部屋から見える立派な庭園を、うつむき加減で話す杏寿郎さんは少し笑っているような...呆れたような、そんな何とも言えない顔で槇寿郎さんとの事を話してくれていた。


妻である瑠火さんを亡くした槇寿郎さんは、己の無力さと炎柱としての見えない壁への重圧から一時期は酒に溺れてしまい、己の気持ちとは裏腹に杏寿郎さんは教える事を放棄した槇寿郎さんではなく歴代の炎柱の指南書を読み込んで柱にまでなってしまったという事。


炎柱の継承は絶たれ長い歴史に傷をつけたとしても、己の子供を本当は鬼殺の道から離れさせたかった事。


そんな事を槇寿郎さんは退院した杏寿郎さんに改めて話をしてくれたそうだ。





「父上の気持ちを知ったからというのではないのだが....今回の上弦との戦いで負った傷は俺の肺にも影響をしている。」





自分の胸元を少し手で撫でながら言う杏寿郎さんは何処か悲痛な面持ちで私を見てきた。




「それでもまだまだ一般隊士に負ける気はしないがなっ！」




そう言ってニカっとした杏寿郎さんは何かに吹っ切れたように、ははっと笑う。





「自分の中で満足とも思えぬ体で、第一線で鬼殺隊を束ねる柱で居続ける事よりも今後の隊士の育成に携わろうと思っているんだ。」


『...................』






そんな事をこの退院してからの数日
杏寿郎さんは考えていたのか....
そしてやはり内臓への傷は見た目は回復してきているように見えていたが想像以上にダメージを与えていたのだな.....



そんな事を分かりもしないで必死に夕餉の揚げ物を杏寿郎さんから奪おうとしていた自分の行動が恥ずかしい....



私は隣に座る杏寿郎さんの手を静かに握る事しか出来なかった。



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