言わせたい【不死川実弥＋】

２＿ひよ ページ9

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「…不死川さんは意外と、小さなお子さんがお好
　きなのですねえ」


ご兄弟が?と問いかけたしのぶに、不死川はあからさまな舌打ちをする。


「…オレに兄弟なんぞいねェ」


「それは失礼致しました。手慣れてらっしゃる
　ようでしたので」


「ちはん、いつもよりやしゃしい」


「余計なこと言ってンな、アホ弟子ィ」


「いひゃい」


ムニ、と不死川に頬を摘まれたAは、それでも嬉しそうで。


不死川に、大っぴらに甘えられるからだろうと見当をつけたしのぶはもちろん、Aの想いを知る一人だ。


(ふふふ……Aさんたら)


「…ンじゃ、このまま様子見りゃいんだなァ?」


ですね、と頷いたしのぶに頷き返してから、ハァ、と不死川は溜息を吐く。


「ったく…世話の焼けるアホ弟子だぜェ」


「もうちわけありまてん」


「うふふ、可愛らしいですよAさん」


「やった、ちのぶしゃまにほめらえた」


「何の足しにもなんねェってのォ」


ブツブツ言いながら、不死川はAをしっかりと抱え直した。


3歳程度であればもちろん、自分で歩くことはできる。

せいぜい、手を繋ぐくらいであろうが。


しのぶの視線から、そんな呆れたような色を感じとったのか、不死川は言い訳するように口を開く。


「…コイツの歩幅に合わすの、メンドくせェんだ
　よ」


「あら、私は何も申し上げておりませんが」


「その目がなァ?」


チッと大きな舌打ちをする不死川に、しのぶはつい吹き出した。


「らめれすよ、ちはん。ちのぶしゃまに、ちた
　うちなんかちたら」


「へェへェ…んじゃ帰るか。邪魔したな、胡蝶」


「とんでもありません。もし何か変化があれば
　Aさんを連れていらして下さい」


「あァ」


「Aさん、一応お大事に。楽しんで下さ
　いね、お子様生活」


「めったにないきかいだもんね!」


そう笑ったAは早速、ぎゅう、と不死川の首元にかじりつくように腕を回す。


いつもならば当然、そんなことは出来もしなければ、許しもしないだろう。


しかし不死川は、されるがまま。

Aのこの姿に、普段より、諸々の許容範囲が広くなっているらしい。


「ちはん、おなかしゅいた」


「おー朝メシ食って帰っかァ」


「かつどん」


「お前今は、胃袋小せェんだぞォ?」


しょうがねェなァ、と歩き出した不死川に抱えられたAは満足げな顔で、しのぶへとこっそり、手を振ってみせたのだった。



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