言わせたい【不死川実弥＋】

ご都合血気術【不死川】 ページ8

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「言えない師範と言わない継子」番外編





「胡蝶ォ! いるかァ?!」


朝の静けさに包まれた蝶屋敷。

夜間警備を終え、愛する妹達と朝食を摂ろうとしていた屋敷の主の微笑みに、黒いものが浮かぶ。

鬼殺隊、蟲柱・胡蝶しのぶである。


近づいてくる重みのある足音に溜息を吐いてから、しのぶは居間を出た。


「どうされました不死川さん、大きな声を出さ
　れて」


しのぶの声色には、「うるせえな」という響きがあったはずだが、その男は意に介しもしないらしい。


「…まあ、そちらの女の子は…」


その特徴ある声の主は、同じく鬼殺隊、風柱・不死川実弥だった。

そして、彼が左腕一本で抱き抱えているのは、どこからどう見ても、せいぜい3歳程度の女の子で。


「不死川さん、いつの間にお子さんを?」


「チ、クソがァ…オレのガキなわけねェだろ」


「私的なことに立ち入るつもりは、ありません
　けれど」


「違ェっつってンだ……おい、A」


不死川の口から出たその名は、しのぶにも馴染みの深いもの。


驚いて見つめたしのぶに、不本意、と言うような表情で振り返ったのは。


「…まあまあAさん。随分とお可愛らしい
　お姿に」


「やめてくらさい、ちのぶしゃま」


幼児特有の舌足らずな発音に、しのぶは恋柱並みにきゅんとさせられた。


「血鬼術、くらったのですね?」


「このアホ弟子、他の隊士庇いやがってなァ。
　で、このザマだわ」


「Aさんらしいです」


「めんもくない…」


今のその姿にはとても似合わない言葉に、しのぶはつい、吹き出してしまう。


「その鬼は斬りましたか?」


「当然だろォ」


「…幼児化する血鬼術は、よくあるものでして。
　精神まで全て子供になるものと、身体のみ子
　供になるものも」


「…話し方はガキそのものだが、中身はいつもの
　Aだ。滑舌はひでェがなァ」


「ちたが、まわらない」


あ、あ、などど確認するように声を発する、風柱の継子、AA。


ここに恋柱がいたら、さぞかし大盛り上がりであろう、としのぶは苦笑した。


「鬼を斬ったのでしたら、せいぜい1、2日の効
　力かと。日光によく当たる、くらいのもので
　すね。対処法は」


「おはだあれちゃう」


「お前、肌は白ェかんなァ」


真っ白で滑らかな、今はいつもよりふっくらとしているその頬を、不死川はスリスリと指で撫でる。


何をしているのだ、というツッコミを、しのぶは敢えて放棄した。


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