言わせたい【不死川実弥＋】

同窓会【伊黒】あさひ ページ40

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日本に帰国して1年。
その日、私のスマホに珍しい人物から1通の通知が届いた。


高校の同窓会のお誘い。
目を瞑るとまるで昨日の事の様に蘇る甘酸っぱい思い出。

その過った思い出全てに彼がいて。
当時の私はその人を中心に世界が回っていた。

自分から想いを伝えた事も、同じ気持ちになれた事も、
デートをしたり、手を繋いだり、キスをしたり、
失恋して、毎日泣き続けたり。

何もかも彼が初めてだった。


あの時、辛くて仕方がなかった心は
今はチクリと鈍い痛みが走るだけ。
それ程の時間が経った。


会えるかな？そんな僅かな期待を胸に私の指先は参加をタップするのだった。




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同窓会当日


帰国後も中々会う機会がなく、久しぶりに会う同級生は、以前の面影を残しながらも馴染んだ化粧に落ち着いた服装。

確実に時間が経ったという事を思い知らされた。


昔話に大いに花が咲き、クラスメイトの近況を全く知らない私は、

誰と誰が結婚しただとか、
子供が5人も居るだとか、
事業が成功しただとか、

そんな高校時代には想像できなかった話を聞き、驚くばかりだった。


「A誰探してるの？」

『え？』


ずっときょろきょろしてる。
友人に指摘され思わず苦笑してしまう。

悪戯に笑った友人は人差し指を1本立て、ズバリと言いきった。


「伊黒くんでしょ？」


眉を下げ小さく頷くと周りに居た子までどこだ、と探しだすが、見回しても目当ての人物はおらず。

参加するって言ってたし、端っこの方にでもいるんじゃない？なんて失礼な事を言う友人に苦笑した。


「あーでも伊黒って結婚するんじゃなかったっけ？」


そんな事言ってたよね、と話し出した友人達に、そうなんだ、ふーん、とその場に合わせた言葉を返し、笑顔で相槌を打ちながら小さく鈍かった痛みは
少しだけ大きくなり私の胸が締めつけた。








もう何年も経っている。当然だろう。
私のこの胸の痛みも、同窓会と言う事であの頃の自分を思い出し少しセンチメンタルになっているだけだ。


確かに高校時代の私は、高校時代の彼が好きだった。
でも今の私が今の彼が好きなわけではない。


適当に話を切り上げ、興味本位で一目見たい彼を探しにその場を離れた。
　

すれ違う人に軽く世間話をしながら伊黒くんを探していたが中々見つからず、疲れて風にあたろうとテラスに行くと、そこから正面玄関に向かう彼が見えた。







＿＿＿帰ってしまう。

そう思ったの瞬間私は走り出していた。




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