言わせたい【不死川実弥＋】

下手くそ【冨岡】あさひ ページ16

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「美味いな」

『美味しいよね、私さくらんぼ好きー』


２歳年下のお隣に住む義勇。
所謂幼なじみと言うヤツで、年齢、お互いの性格もあって、姉、弟の様な関係だ。


親同士が仲がいい事もあり、高校生になった今でもお互いの家をよく行き来している。
　

今日は私の家で御中元で送られてきた果物、高級さくらんぼを2人で食べていた。




なんとなく流れで
さくらんぼの柄を結べるかという話になり、やった事がないと言う義勇に口頭で説明すると、義勇は柄を一つ取り口の中に入れた。


口をモゴモゴと動かし、必死に結ぼうとしている姿がかわいい弟義勇くん。


あわわわ！その顔かわいい！好き！
その様子を目を細め、ニマニマとしながら眺める。


『ねぇー知ってた？さくらんぼの柄を結べる人ってキスが上手いんだって！』

「……。」


頑張れーと言う私に無言のまま、義勇はさくらんぼから柄を外し、差し出した。


お前もやれ、と？
コクリと頷く義勇からそれを受け取り、口の中に入れると苦戦する事なく直ぐに結べた。


『出来たよ？』

「！？……見せてみろ。」


べーと舌を出し、結び目が出来たさくらんぼの柄を見せると
義勇は、はむっと私の舌を








………………………………………………食べた。






時間にして2.3秒。停止してしまった思考を再開させると
確かに先程まであった私の口にさくらんぼの柄がない。


『何してんの！？馬鹿じゃない！？』

「…。」


みるみると顔に熱が集まるのを感じ、動揺する私とは対象に
義勇は素知らぬ顔で。口をモゴモゴとさせ、私が結んだ柄を確認しているようだ。
　

その姿に更に羞恥心が煽られる。


「柄が結べなければキスが下手なのだろうか。」

『は？』

「試してみるか？」


何を、と聞く筈だった言葉は義勇に塞がれた。
無理やり唇を舌でこじ開けられ、深く激しく。
それでいて溶けてしまいそうに甘い。


粘着に絡めとられると
離す時にすーっと銀の糸が私達を繋いでいた。


「どうだ？俺は下手か？」

「次はAだ。教えてくれ。Aは結べるからな。」

「俺が出来る様になるまで付き合ってもらう。A姉さん…？」


男の顔をした義勇に真っ直ぐに見つめられ、ジリジリと詰め寄られる。


そうして、正面を通り過ぎ、耳元に囁かれた。



「こういう俺が好きなんだろう？」



低く澄んだ声に射抜かれた私は、黙って小さくコクリと頷くのだった。


かわいい弟から彼氏に変わるまであと僅か。




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