言わせたい【不死川実弥＋】

家庭教師【不死川】ひよ ページ14

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ガチャリと開けられた玄関、よそいきの笑顔を貼りつけていた私は、思わず固まった。


(…お兄さんか…弟さん?)


「あ、あの…すみません。私、粂野くんの代わ
　りに、ミミさんの家庭教師を、」


「はァ? ミミィ?」


「え、やだ、お名前間違えちゃいましたか」


慌ててスマホを取り出し、粂野のラ○ン画面を開いた。


「…ふしかわ、ミミさん?」


恐る恐る口にしたら、目の前で途端に深くなった、眉間のシワ。


やべ、めっちゃ怖いわ。

このお兄さんだか弟さん何者?!


「…しなずがわ、さねみィ」


丁寧に発音してみせた後、ミミさ…じゃなかった
さねみくんとやらは、大きな溜息を吐いたのだった。






簡単な話だ。

大学の同級生、サークルも同じ粂野匡近が、インフルエンザにかかったらしい。


「可愛いがってる幼馴染のカテキョ、今日だけで良いから頼まれてくれ」と拝まれた私は、ランチ奢りの約束につられ、引き受けたワケで。


粂野からラ○ンで送られてきたのは、「不死川実弥」という生徒さんのお名前と、おうちまでの地図。

それを眺めながら、このお宅へと辿り着いて、冒頭の状況に至る。


「……」


「……」


部屋の空気は、恐ろしいくらい重かった。


私は小、中、高まで生粋の女子校育ち、正直いって、男性への免疫はないに等しい。

大学はさすがに、と系列校ではない今の大学を受験して通っているけれど、男の子の友達といえば、粂野くらいだ。

そもそも粂野は、お母さんみたいな人だし。


(…よく見ると、キレイな顔)


さっきは怖さが勝ったけど、問題集を真剣に繰る横顔は、はっきり言ってイケメンの部類。

ジロジロと無遠慮な視線に気がついたのか、こちらを見遣った彼のソレと、重なった。


「…なんスか」


「ごめんなさい何でもないです」


目が合っただけなのに、心臓はうるさい音を立てるし、顔まで熱い。


落ち着け。

私は大学３年、向こうは高３の受験生。

３コも下を相手に動揺をみせるなんて、いくらなんでも…


「…A、センセー」


お、名前覚えてくれてる。


「あ、ごめん何?」


「…匡近はいつも、ご褒美用意してるんスけど」


ほうほう、ご褒美。

お菓子とかそんなものかな、育ち盛りだろうしね。


「そっかあ、ご褒美ね。あるとやる気出るし
　ね…ごめん、私何も…っ?」


…何が起きた?


「…十分ス、これで」


そうしてニヤリと笑う実弥くん。

私よりよっぽどオトナの顔をしていたのは、解せない。


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