第二幕 証言 ページ3
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「うーん……大坤も、結局似たような感じだったな」
話を聞かせてくれた大坤に別れを告げ、埠頭から大通りに戻るころには日付が変わっていた。
千岩軍の歩哨・大坤は、このあいだ南埠頭から北埠頭へ異動になったのだが、元の勤務地である南埠頭で複体が目撃されている。
「なかなか手がかりが見つからない……」
「そうだな……あっ、香菱に聞いてみるか? 複体を直接見たのは彼女だ!」
「確かに。夕飯ついでに、聞きに行こうか」
*
「え? カズイ様の特徴?」
香菱が料理を運んできてくれたタイミングで、そう聞いてみる。
隣では待ちきれなくなったパイモンが鳥肉とスライムの揚げ焼きにかぶりついているが、この際気にしない。
「うーん、そうだなぁ……特に変わったところはなかったよ? どこから見てもお父さんそのまま! すごいよね、あれ」
「よく思い出してみて。雰囲気が違ったとか……」
「えー? 待ってね、頑張ってみるから」
香菱は唸りながら思い出そうとしてくれる。
たまたま万民堂がひと段落したときで助かった。
「そう言われれば……ちょっと違ったかも。アタシの知ってるお父さんじゃなくて、なんていうか……ぼんやりしてた」
「休憩してたとか?」
「ううん、アタシも疲れてるのかなーって思ったんだけど、玉京台まで行く必要がないもの」
確かに、もっともだ。休憩している間に客が来たら困るし、そもそも本人も言っていたように、開店中に店を放り出すなんてありえない。
ならやっぱり無相複体なんだろう……けど。
「でもよ、ぼんやりしてる璃月人を見つけるなんて難しすぎないか?」
「うん。髪の色が違ったとか、目の色が違ったとか、そういうのなら分かりやすいんだけど……」
「だよね〜……でも見た目は完璧だったんだ、ごめんね。それじゃ、冷めないうちに食べて食べて!」
「もちろん! いただきます」
熱々の黒背スズキの唐辛子煮込みを頬張りながら、考えを整理する。
無相複体は、どうやら本物よりもぼんやりとした仕草をしているらしい。ただし、外見は完璧。
でも仕草にしろ挙動にしろ、差異が出るのならそれは完全な『複体』ではなく、『物真似』なんじゃないだろうか。
なんらかの元素力で、錯覚を見せているとか?
ここは璃月だし、仙人かもしれない。
「パイモン、何か分かりそう?」
「いや〜、オイラにはこの揚げ焼きがうまいということしか……」
「もー……」
ごちそうさまでした、と手を合わせ、香菱に手を振った。
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作成日時:2021年7月16日 2時