終幕 任務完了 ページ12
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往生堂で聞いたら、先生は冒険者協会にいるそうだ。俺たちがそこに戻ってくることを知っているからに違いなかった。
そして、彼は確かに冒険者協会の階段前に立っていた。長い髪が風に揺れている。
「『化瑞』は、何と?」
「鍾離を追っ払ったのは、人を傷付けるのが怖いからだってさ。あと、もう海灯祭の日しか来ないって」
先生はそうか、とだけ言って黙り込んでしまった。無相複体と浅からぬ因縁でもあるのかもしれない。
「明日の夜、明蘊町に来てくれるよ。先生が会いたがってることも伝えておいたから、逃げられたりはしないと思う」
「ありがとう、旅人。明日の夕食は俺が奢ろう」
「本当か!?」
「ああ。今度は財布を持っていく」
……一応、万が一のため、念には念を入れて、モラをたくさん持っておこうかな……
「俺は少し散歩をしてから往生堂に戻る。上で今回の件を報告してくるといい」
「おう!」
鍾離先生と反対の方向へ、階段を上がる。
嵐姉さんは難しい顔で掲示板の中の、一つの依頼を見ていた。内容は……『黒いローブの人影』? アビス教団かもしれないって書かれてるけど、これって。
「嵐姉さん! 無相複体の件、解決したぞ!」
「あと、その依頼も解決したかも」
「あら。二つもいっぺんに? さすが大英雄様ね」
くすくすと笑い、嵐姉さんは無相複体に関する依頼書を掲示板から剥がした。解決したことに疑いは持たれていないようだ。嬉しい。
「で? 複体が毎日現れる理由、なんだったの?」
「うん、それが……」
「海灯祭のとき以外の人の暮らしが見たかったんだってよ!」
「え?」
「だーかーらー、人が好きなんだって、あいつは!」
面食らった様子の姉さんと、得意気なパイモン。
「吉兆かどうかは、無相複体は何も関係してないって。そもそも、もうずっと自分自身と会った人はいないんだし……あ、あと、黒いローブの人影は『複体』だった」
「……待って、整理するから」
一度に言いすぎたかも。
嵐姉さんがまとめて俺たちに語り直してくれたことを箇条書きすると、
・無相複体は最近埠頭にいる黒服と同一。
・無相複体は吉兆ではない。
・無相複体は人の営みを近くで見たくて現れた。
・つまり、凶兆でもない。
こんな感じ。
うん、璃月港支部長なだけある。
「わかったわ、総務司にも報告しておく……はい、報酬。事実は小説より奇なり、ね……まさか現象じゃなく生き物だなんて……」
世界任務 : 無相複体
- 任務完了 -
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作成日時:2021年7月16日 2時